けんきゅうの現場から
2013年1月号

放射能汚染廃棄物の安全・安心な埋立処分に向けて

石森 洋行

放射性物質混じりの廃棄物を埋立処分する場合、放射性物質が埋立地内を拡散し近隣環境へ流出することは防がなければなりません。そのためには、廃棄物からどれだけの放射性物質が溶け出るのかを把握し、万が一溶け出た放射性物質に備えて、その移動を充分に遅らせるための土壌吸着層を廃棄物の下に設ける等の工夫が必要になります。

これまで国立環境研究所では、埋立地内での化学物質の動きや、焼却灰など廃棄物からの化学物質の溶出挙動を多数研究してきましたが、放射性物質に関しては、知見は充分ではありませんでした。そこで被災地や焼却施設から放射能汚染廃棄物や土壌、環境水等を採取し、その放射能濃度の実態を把握するとともに、それを用いて以下のような実験研究を行うことで、放射能汚染廃棄物の安全・安心な埋立処分の実現に向けての科学的知見を集めています。

写真1 埋立条件を考慮した放射能汚染廃棄物の大型溶出試験 写真1 埋立条件を考慮した放射能汚染廃棄物の大型溶出試験

写真1は、廃棄物から溶け出る化学物質量を評価する溶出試験を実施している様子です。数十リットルもの大きな容器を用いて、しかも複数の実験装置を同時に動かしています。容器の中には、福島第一原発事故後に発生した放射能汚染廃棄物と水が入っていますが、埋立時の状況を考えて、廃棄物を有姿のまま埋めた状態(ばら埋め)や、セメント等で固めた状態、フレキシブルコンテナバック(フレコン)に梱包の状態等、いろいろな条件を考えて実験を行っています。さらにこれらの溶出試験は半年以上継続しており、海面処分場等の閉鎖水域に放射能汚染廃棄物を埋めた場合の安全性評価に役立てられています。

写真2 放射性セシウムに対する土壌吸着能を調べるための長期カラム吸着試験 写真2 放射性セシウムに対する土壌吸着能を調べるための長期カラム吸着試験

写真2は、円筒形の容器に土壌を詰めて土壌吸着層を模擬し、そこへ放射性物質を含む廃棄物浸出水を通過させて、土壌吸着により放射性物質の移動がどの程度遅らせることができるのかを調べている様子です。土壌を流れる液体の移動速度は1日当たり数ミリ~センチと非常にゆっくりなので、この実験を終えるには数か月も要します。このような複雑な実験や息の長い研究は、埋立地内での放射性物質の長期挙動を考える上で重要であり、埋立地外への放射性物質の流出しないような安全・安心な埋立処分方法の提案につながっています。

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