2008年10月6日号
オランダ通信(1)滝上英孝
5月から半年間、所の海外研修制度を利用してオランダ・アムステルダム自由大学/環境研究所に滞在しています。 オランダでは、台風並みというわけではないですが、北海から強い風が吹きます。それを利用するために風車がつくられ、堤防を築いて水をくみ出して国土をつくってきたわけですが、その強い風でポプラの木が時々耐えられずに倒れてしまいます。そのポプラの倒木を有効利用して木靴をつくっています。木靴はお土産だけでなくて、履くと暖かく水もしみ込まないので、少し分厚い靴下を履けば十分に実用的です。木靴が履きつぶされたら、今度は鉢植えに変身して民家の壁に掛けられていたりします。 さて、私もオランダ名物の自転車に乗って買い物に出かけます。乗ったはいいがハンドブレーキがなく、ペダルを逆回転して停止するフットブレーキです。平均身長(男性)が185センチのオランダ人仕様のサドルにまたがるとそうそう降りられず、交差点では曲芸です。自転車は専用道路があって、原付バイクと共有ですが(危ないです)、歩行者道や自動車道路とは分かれています。それぞれの乗り物の道があって、歩行者>自転車>バイク>車の順で交差点の通行が優先されます。ルール順守は、かなりちゃんとしています。 至る所にある犬の糞をよけながら自転車をこいでスーパーマーケットに着きました。みんな、買い物袋を持ち込んでショッピングです。スーパーにはペットボトルや瓶の自動回収機があってデポジット金が返ってくるので、買い物袋には行きがけに空き瓶などを入れておきます。食パンや牛乳、チーズといった乳製品、それからハムが日本よりも安く買えて、しかもおいしいです。酪農製品や野菜の国内自給率は200%を超えているそうです。レジに並びましたが、店員が前の客と長いお喋りをしており、なかなか先に進みません。でも、みんな気にも留めていない様子です。買い物かごを足で蹴りながら(押しながら)前に進むのは、さすがサッカーのお国柄でしょうか。おばあちゃんもするので、行儀が悪いわけではないみたいです。 買い物を終えて、家に帰ります。オランダの家屋は、カーテンを引かずに夜でもどうぞ中を見て下さいといった感じです。プロテスタントの清貧思想でしょうか。中もきちんと片づけられています。住居にはかなりお金をかけていそうです。一方で、食生活は極めて質素です。朝昼は火を使わない簡単なサンドイッチ程度の食事です。衣類や持ち物についてもブランド品志向というものがないようです。ケチなのか贅沢なのかよく分かりませんが、慈善事業や環境保護の募金を募れば、すぐにお金が集まるようなところがあり、ケチでもないようです。 家で料理をつくります。蛇口をひねれば日本人にも飲める水が出てきます。運河の水はよどんで飲めそうにありませんが、水道水は地下水を利用します。塩素を使わずに地下水を砂ろ過して水道水として供給しています。料理で出た野菜くずなどの生ゴミは、分別して自治体がコンポストにします。その他のゴミは地下コンテナに入れて、週1回クレーン車が来て吊り上げて中身を回収します。ゴミの分別にオランダ人も積極的なようですが、日本ほど徹底的ではありません。ごみの収集を始め、社会のいろいろなルールをトップダウンでなく、市民が議論を重ねながら決めていく気風がオランダにはあるようです。治水や干拓といった一人ではどうにもならない問題に歴史的に対峙してきたからでしょうか。 何やらオランダの生活情報をぎゅうぎゅうに詰め込んで書いてしまいました(環境のこともいろいろ触れたつもりですが、余談が多くてごめんなさい)。外国に出てみれば、常に日本との比較で頭の中がいっぱいになります。頭の中の振り子を思い切り振られた感覚です。次回はこちらでの研究活動について書くことにします。 |
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