循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のまめ知識
2011年1月11日号

ITO(インジウムスズ酸化物)

藤森 崇

 普段何気なく見ているテレビやパソコンのフラットディスプレイに、インジウムスズ酸化物(ITO)と呼ばれる無機化合物が使用されていることをご存知でしょうか。希少金属(レアメタル)のひとつであるインジウムの用途の内約8割が、このITOとしてフラットディスプレイ内に利用されています。なぜITOが必要かというと、透明であり、かつ電気を通すという2つの性質を併せ持っているためです。ITOの「透明導電膜」によって、薄い画面から快適に視聴することができるのです。

環環ナビゲーター:りえ 一方で、近年、ITOの製造・リサイクル工場で働く方が肺疾患で亡くなるケースが報告され、工場での作業中にITOを長期的に吸入したことが原因ではないかと考えられています。実際、工場で働く方の血液を調べると、その多くが肺疾患を引き起こすレベルのインジウム濃度だったそうです。ITOはフラットパネルの内部に薄膜状でくっついているため、実生活で視聴しているフラットパネルの画面からITOが漏えいする可能性は低いと考えられます。しかし、フラットパネルが廃棄された後にITOが環境中へ放出されてしまうことが懸念されます。死亡症例の報告以外に、ITOの毒性に関する研究事例は非常に少なく、今後の研究を積み重ねることでITOの危険性を正しく評価することが求められます。

 みなさんもご存じの通り、2011年には地上デジタル放送への完全移行が予定されており、フラットパネルの使用はより一層多くなると見込まれます。ITO以外の透明導電膜の開発も進んでいますが、この先数年間ITOの需要は維持されると考えられています。ITOに限らず、化学物質の適切な使用のためにも、負の側面も含めた環境配慮型の研究評価をしていくことが必要です。

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