2008年2月18日号
水蒸気改質井上研一郎
水蒸気改質とは、メタン等の炭化水素を水蒸気と反応させ、水素と炭酸ガスを製造する方法です。天然ガスから水素を取り出す工業的な製造方法として古くから用いられてきました。 廃棄物を熱分解ガス化すると水素や炭酸ガスの他に炭化水素類等が生成します。この炭化水素類を水蒸気改質することで、より高濃度の水素が得られ燃料電池やガスタービン等を用いた発電に利用することができます。 ガス中に炭化水素類が含まれると燃料電池の性能を劣化させる原因になる場合があります。また、比較的沸点の高い炭化水素類は、ガスが炉から排出され温度が低下するとタール(粘性のある油状物質)として凝縮し、配管を詰まらせてしまう場合もあります。 これらの観点からも水蒸気改質により熱分解ガス中の炭化水素類の濃度を低減させる必要があります。 この水蒸気改質反応にはかなり高い温度を必要としますが、触媒を用いることにより比較的低温で改質することができます。触媒としてニッケルを用いた場合、700〜800℃程度の低温でもガス中の炭化水素類の濃度やタールの生成量を大きく減少させることができます。 しかし、ごみの質等の条件によっては燃料電池等への適用が可能なレベルにまで低減することは難しいという問題があります。また、ニッケル触媒は炭素を析出しやすいという欠点があります。これは炭化水素類を改質した場合、炭酸ガスが生成せずに固体炭素として触媒表面上に析出してしまうため、触媒の性能を低下させやすいということです。 これを防ぐために水蒸気の量を増やす、触媒に酸化カルシウム等の酸化物を含有させるといった対策がとられています。ロジウム等の貴金属は触媒の活性を高め、炭素析出を起こりにくくすることができますが、高価であるという短所があります。 バイオマスや廃棄物の熱分解ガスを発電等に利用するという試みは、古くから行われてきましたが、タールの生成の抑制は大きな課題として今も残されています。触媒を用いた水蒸気改質はこれを解決するための一つの方法であり、高い活性を示す触媒の開発は現在も続けられています。 |
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