循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 近況
2011年4月1日号

資源循環・廃棄物研究センターとしての新たな門出

大迫政浩

 未曾有の東北関東大震災に直面し、私たちが担っている分野である災害廃棄物処理の問題をどうするか、その対応に忙殺される中でこの原稿を書いています。多くの被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。私たちも、被災された方々の元気を取り戻し、東北が、日本が復活するために、災害廃棄物処理の観点から復旧・復興対策を支援したいと考えます。

 2011年4月1日、私たちは「資源循環・廃棄物研究センター(循環センター)」として新たなスタートを切ります。私は、センター長として重責を担うことになりました。循環型社会づくりに向けて、政策貢献という国の研究機関として使命を認識し、資源循環・廃棄物分野の中核機関としての役割を果たしていきたいと思います。

 さて、環境や資源・エネルギー制約の問題から、私たちの生存基盤が危ぶまれてきていることが、強く認識されつつあります。日本においては、自由経済のグローバル化の下で、新興国の台頭による産業の空洞化が進行し、合わせて少子高齢化による人口減少時代への移行、情報化社会が進む一方で人のつながりが薄まりつつあるなど、わたしたちを取り巻く社会の情勢は厳しく、世の中に閉塞感が蔓延しつつあります。

 そのような社会情勢の変化の中で、資源循環や廃棄物の問題の様相も大きく変化してきています。二十世紀後半は、経済活動に伴い大量に排出される廃棄物をいかに適正処理するかが重要な課題でした。最終処分場の逼迫や不法投棄、廃PCBやダイオキシン問題など経済発展がもたらした廃棄物問題、負の遺産への政策的対応がなされました。二十一世紀に入り、廃棄物問題の解決のためのリサイクルが、「循環型社会」という新たなキーワードを得る中で、発生抑制を含めた3Rという概念に拡張されてきました。

 しかし、先にも述べたように、社会情勢は刻々と変化し、それに伴い廃棄物問題も変化していることから、「循環型社会」も時代に合わせて、あるいは将来を見通しながらさらにその概念を広げ、かつ深化させていく必要があります。(1)経済のグローバル化の下で、廃棄物等はその資源的価値から国際的に移動、循環しており、環境リスク低減と資源安全保障の観点からその適正管理が課題になっています。(2)アジアの新興国などにおいては、かつての日本が経験した廃棄物問題が顕在化しており、日本が蓄積してきた技術や社会システムを基にした国際貢献が求められています。(3)日本の地域再生に向けて、低炭素社会や自然共生社会と統合的に循環型社会づくりを進めていくことも喫緊の課題です。

 循環センターでは、上記のような問題意識に立って、(1)日本とアジアの近隣諸国にまたがる国際的な問題、(2)アジアの発展途上国の問題、(3)日本国内の地域の問題、の三種類の空間的な区分について焦点を当て、廃棄物の適正管理とともに、低炭素社会、自然共生社会と統合した循環型社会づくりに貢献するための研究を推進していきたいと考えています。特に、「研究」のための研究ではなく、社会実装まで至る活動を心がけたいと思います。

 一方で、廃棄物の分別やその後の処理・処分、様々な有害廃棄物の管理の問題も重要な課題です。現場で起こっている問題を的確に捉えて、実践的かつ着実に問題解決に貢献するための研究も大切にしていきたいと考えています。また、今すぐに問題が顕在化しなくても、将来を見通して新たに生じる問題を予測し、将来に備えるための基礎的、基盤的な研究も進めていきます。

 さらに今付け加えなければいけないのは、このたびの東北関東大震災の復旧・復興を支えるための知の結集を担うことです。現在の緊急的な復旧対応から、今後は復興に向けた議論が始まるでしょう。そこには、循環型社会からみた新たな構想も必要になるでしょう。全身全霊を傾けて新たな社会づくりに貢献していきたいと考えています。

ゆうぞう博士&Dr.グッチー

 以上のような状況から、暫くは震災への復旧・復興支援に専念させていただくとともに、新しいセンターの下で本マガジン「環環」の編集も新たな体制に移行しますので、その準備、充電期間を頂ければと考えています。数ヶ月間の一時休刊の後に今夏には再開しますので、読者の方々におかれましては、期待してお待ち下さい。

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