循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 近況
2008年4月7日号

国際的な活動を中心とした対外活動の最近の状況

森口祐一

 センター長に着任して3年が経過しました。「環環」の編集担当者から示された「近況」欄の内容の例に、所信表明、会議出席の報告などとともに、センター長の1日、という項目があります。一言で言えば「外」に出る機会が多い毎日ですが、スケジュールの記録をもとに振り返ってみると、2007年度は、それ以前と比べて外に出る回数がとくに多い1年間でした。今回は対外活動の概要、とくに最近さらに増えつつある国際的活動についてご紹介します。

 中央官庁が進める政策への助言のための審議会や検討会、他機関と共同で進める研究プロジェクトの打ち合わせの会議などの多くは、東京で開催されます。このため、東京に足を運ぶ回数が勢い多くなり、最近数年は、年間100日前後に達しています。最近の主な課題は、家電製品のリサイクル制度や循環型社会形成推進基本計画(循環基本計画)の見直しなどです。第2次循環基本計画は、3月25日に閣議決定されました。一方、2006年度からは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の客員教授を兼務し、循環型社会創成学分野という名称の連携講座を担当しています。2007年度からは院生が配属になり、ゼミや会議で月に2〜3回、柏キャンパスに通っています。

 一方、国際面では、国際学会や海外の機関との研究協力のほか、OECD(経済協力開発機構)、UNEP(国連環境計画)などの国際機関の活動にも参加しています。2008年は日本で7月にG8(先進8ヶ国)サミットが、またこれに先立ち、5月にG8環境大臣会合が開催されますが、それらに向けた国際活動への参加の機会も増えています。

3R

 G8の枠組みにおいて、日本は3Rイニシアティブを提案し(2004年シーアイランドサミット)、リデュース、リユース、リサイクルという3つのRや「もったいない」という言葉とともに、廃棄物問題に取り組んできた日本の経験を世界に発信しています。3Rイニシアティブでは、アジア地域での3Rをどのように進めるかが重要な課題の一つであり、各国ごとに循環型社会を構築し、廃棄物の不法な越境移動の防止を十分に行うこと、それを前提に国際的な資源循環を進めていくべきことなどが議論されてきました。循環型社会研究プログラムの中核プロジェクト4はこれと密接にかかわる研究です。

 また、2003年のG8会合において、日本は物質フロー分析に関する国際共同研究を提案し、これに基づき、OECDにおいて物質フロー分析と資源生産性に関する取り組みが行われてきました。資源生産性とは、少ない資源で大きな豊かさを生み出そうとする考え方を数値で表現したものです。2007年9月には、3年余りの活動の総決算となるセミナーが日本の環境省とOECDとの共催により東京で開催され、筆者は議長としてまとめ役を担いました。このグループでは、物質フロー分析に基づく指標の開発と政策への利用を中心的な検討課題としてきました。日本の循環基本計画に取り入れられてきた物質フロー指標や数値目標は、このOECDでの取り組みの一つの先進事例であり、逆に、最近数年のOECDでの検討成果は、第2次循環基本計画における物質フロー指標の拡充に反映されています。この分野では、日本の取り組みと世界での取り組み、研究者・専門家による手法開発と行政機関・国際機関における政策利用とが、相互に影響しあいながら進展しています。

 また、2007年11月には、UNEPが事務局となって、「持続可能な資源管理に関する国際パネル(資源パネル)」が設立されました。資源パネルは、資源が環境から取り出され、材料や製品に加工され、寿命を終えて捨てられるまでの一連の過程における環境影響やその低減策についての科学的な知見を蓄積し、政策を支援する情報を提供すること、そうした能力を高めるための国際的な知識交流を深めていくことを目的としています。パネルは世界各地域から選ばれた20名の専門家で構成され、その1人として筆者も参加しています。今後、年に2回程度の会合が開催される見込みです。

たけ&りえ

 こうした資源消費に伴う環境影響を考えるうえでは、アジア地域、とくに中国の経済発展による資源需要の急増が重要な意味を持っています。中国では2008年3月に、国家環境保護総局(SEPA)が環境保護部(部は日本の省にあたる)に昇格し、循環経済に関する法律の制定も進んでいます。日本の循環型社会と中国の循環経済とは、対象とする問題の範囲が多少異なりますが、「循環」という二文字を概念として共有できることの意義は大きいと感じています。先進国の一員として、アジア地域の一員として、日本の専門家の役割はますます重いものになることを肝に銘じつつ、今年度も微力を尽くす所存です。

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