2010年7月5日号
集じん装置でとれないもの川本克也
【答え】
窒素酸化物
【解説】
ごみの焼却処理は、排出されたごみを早く衛生的に減量できるなどの長所をもつ反面、発生したいろいろな大気汚染物質への対応が必要です。主な汚染物質のうち法律で排出基準が定められているものは、ばいじん、塩化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物、そしてダイオキシン類です。ばいじんとは、主に排ガスとともに飛散してきた飛灰です。 これらに対する排ガス処理は、焼却炉後段でボイラーにより熱回収され、さらに冷却塔などによっておよそ200℃以下に温度が低下した後に集じん装置に送られて処理が進むことになります。集じん装置には、ダイオキシン類の生成が問題になって以後、従来の電気集じん器からバグフィルター(ろ過式集じん器)に多くが置き換えられました。 もっとも一般的な処理方法は、乾式と呼ばれ、バグフィルターの手前で、煙道に消石灰や粉末状の活性炭を注入します。これによって、元々粒子状のばいじんはもちろんのこと、酸性のガスである塩化水素と硫黄酸化物が中和反応によって除去されます。そして、温度が低下したことと、活性炭と飛灰中の未燃炭素粒子のもつ吸着作用によってダイオキシン類が除去されます。ダイオキシンは疎水性(水との親和力がとても小さいこと)が強いので、活性炭などの表面が疎水性の固体に吸着されます。なお、バグフィルターのろ布表面にばいじんと消石灰などの添加物から形成されるケーキ層と呼ばれる厚みのある固体層をガスが通り抜ける際に、上記の物理化学反応が生じていると考えられます。そして、反応はできるだけ低温である方が有利であり、集じん装置は150〜200℃で運転されます。 さて、この中和と吸着の原理で取り除けないのが窒素酸化物で、これは燃焼により発生してから間がないことからおよそ90%は一酸化窒素(NO)の形態で存在しています。近年、都市部の施設を中心に、集じん装置の後段に触媒脱硝塔が設けられることが多くなっています。窒素酸化物は、アンモニアの注入と触媒を適用した脱硝反応によって除去されるのです。 |
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