2008年3月17日号
リサイクル品の偽装・不適正表示問題田崎智宏
昨年、2007年を表す漢字は「偽」でした。「偽」が選ばれた理由には、1)相次ぐ食品偽装問題、2)政界に多くの偽り、3)老舗にも偽装が発覚、4)他にも多くの業界に「偽装」が目立った年、といった点が挙げられています。 しかし、不幸にも2008年に入っても「偽」の報道が続き、環境分野にも「偽」が拡がってきてしまいました。まず、年明け早々の1月8日に、古紙を40%利用することになっていた年賀はがきの一部で、実際には1〜5%しか古紙が使われていなかったことが報道されました。 同18日までには、年賀はがきだけでなく、コピー用紙など他の製品についても古紙配合率を偽っていたことを大手製紙5業者が認めました。例えばコピー用紙は、「グリーン購入法」(正式名称は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)に基づいて、古紙100%のコピー用紙を国等が使用することとなっていますが、古紙配合率が50%などと大幅に基準を満たさないものが存在することが分かりました。 これを受けた日本製紙連合会による正会員企業38社の調査や、環境省と経済産業省による追加の実態調査の要請により行われた調査報告により、90年代からこのような偽装を始めた業者がいることなどが分かりました。3月7日にはさらに問題が広がり、ケナフやバガスなどの非木材パルプでも11社で配合率の偽装があったことが報道されました。 現在、グリーン購入法の基準の見直しが進められており、グリーン購入法の対象品目や基準を検討する「特定調達品目検討会」が古紙配合率の基準のあり方等を議論・検討しているところです。 この間に、その他のエコ製品についても同様な不適正表示問題が発覚しました。リサイクル品ではありませんが、2月1日には某業者により、大豆油の最低含有基準を満たさない大豆油インキが出荷されたこと、「エコマーク」を貼付した新聞インキ等がエコマークの石油系溶剤やVOC(揮発性有機物質)の含有基準を満たさないまま出荷されたことが発表されました。 同8日には、文具用途の再生プラスチックについても不適正表示があることが判明しました。文具製品については、エコマークでは70%以上、グリーン購入法では40%以上の再生品利用を求めていますが、某業者の製造する再生プラスチックがこの基準を満たさないまま某文具製造業者に出荷され販売されていました。 同29日には、同様の問題がその他のプラスチック材料メーカー2社、再生プラスチックを用いた製品メーカー6社にあったことが分かり報道がされました。 さて、偽装を行うような企業への批判については、論を待つ必要はありませんので、ここでは繰り返しません。また、マスコミの報道などでは、盲目的に再生品配合率の向上を望んできた需要者側の問題も指摘されています。この点も、ある程度指摘通りですので、繰り返しません。 この一連の偽装・不適正表示問題から、少なくとも次の2つの課題に答えを見出していく必要があります。 まずは、再生品の配合率を何パーセントにするのが望ましいかという問題です。例えば、コピー用紙における100%という再生品利用基準には批判があります。むしろ70%程度の配合率にした方が環境負荷が小さくてすむといった意見です。 この意見の妥当性はともかくとして、このようなことを明らかにする意義は、何のためにリサイクルを行うのかという問いに自ずと答えることになることです。環境負荷を低減しないリサイクルを回避して、意味のあるリサイクルを確保することにも繋がります。 もう一つは、リサイクル品に再生材料が使われているかをどのようにチェックするかという問題です。配合率の基準を引き下げたとしても、それより低い配合率で製品を作る方が経済的に利益が大きければ偽装が起きる可能性は残ります。常時チェックするかは別として、少なくともチェックできる手段を確立しておく必要があります。 しかしこれは悩ましい問題です。リサイクル品のなかには、化学分析などで非リサイクル品と区別できないものや区別が難しいものがあります。特に再生品に高い品質を望む消費者が多いという現状では、自ずと区別しにくいものが多くなるかもしれません。かといって、何らかの識別物質を加えるのも費用増加につながり、リサイクル品の価格が高くなることが懸念されます。 このような場合は、リサイクルで回収された材料等がリサイクル品に使われたかという流れを情報で把握することも考えうる対策の一つですが、これも費用増加の懸念が残ります。リサイクルを推進させつつも、悪質な業者をリサイクル市場から排除できる有効な仕組みが現在、求められています。 |
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