循環・廃棄物の豆知識
2011年11月号

触媒反応でガスを変換する

魯 保旺

廃棄物系バイオマスに熱分解ガス化技術を適用すると、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)などを含むガスが生成します。しかし、種々の副生成物が共存しているためそのままではガスの利用価値はあまり高くなく、H2とCOの濃度をさらに高めたり、メタン(CH4)ガスに変換したりすることができれば、より利用価値が高まります。

H2を多く得るにはどうすればよいのでしょうか?-それには、水蒸気を導入することにより150~250℃で水生ガスシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)を促進することが有効です。この効果は、H2Oの注入量、温度および触媒の種類など多くの要因に依存します。ロジウム(Rh)はH2の発生にもっとも促進効果が大きい触媒です。

また、600~700℃で生じる逆シフト反応(CO2+H2→CO+H2O)を利用することにより、CO2から重要な有機工業原料であるCOを得ることができます。これには、銅(Cu)やニッケル(Ni)などの触媒を用いることが有効です。

ただし、以上の二つの反応はともに平衡反応のため、工夫しなければ、得られるH2とCOの濃度はあまり高くなりません。反応温度を高温にしたり、原料を高濃度にしたりすることで反応をより促進させることが可能ですが、なるべく低温で効率よく反応が進む条件を探ったり、触媒を効果的に用いることにより、H2とCOの濃度をさらに高められるかが課題です。

更に、ガスの温度が350~400℃の範囲でNi、Rhなどの触媒を用いてメタン化反応(CO+3H2→CH4+H2O, CO2+4H2→CH4+2H2O)を行わせることで、COやCO2からCH4が得られます。これらの反応の組み合わせによって、バイオマスから持続的にエネルギー回収することが可能となるので、大変魅力的な反応プロセスだといえます。ただし、不活性なCO2のメタン化速度はCOに比較し非常に遅いので、これまではCOを対象にメタン化を行う例が多いのですが、今後はエネルギー回収率を高める観点からCO、CO2両方のメタン化が注目されていくと思われます。

このように、ガスの改質・変換は廃棄物系バイオマスの熱分解ガスの利用価値を高める手段であり、それには触媒が非常に重要な役割を果たします。しかし、適正な温度での反応促進、触媒効果の長期間維持、触媒の再生、阻害物質除去など、チャレンジすべき課題が残されています。今後さらに研究が進み、より利用価値の高いガス改質・変換技術が開発・実用化されることが期待されます。

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