2007年4月16日号
溶出試験鄭昌煥
廃棄物やリサイクル製品中に含まれている重金属等の有害な成分は、水との接触によってその一部が環境中に放出され、土壌や地下水を通り、最終的には人間まで影響を及ぼす可能性があります。 従って、廃棄物を埋立処分したり、何かの形でリサイクルするときには、それらから有害成分がどのくらい溶け出る可能性があるかを把握しなければなりません。実験室で予めこれを評価しようとするのが「溶出試験」です。 我が国では、法律に基づく試験として、産業廃棄物等の埋立処分方法やその可否を判定するための試験法(昭和48年環境庁告示13号)、および、土壌が環境基準を達成しているかどうかを評価するための試験法(平成3年環境庁告示46号)があります。 最近では、JIS規格として、製鉄、金属精錬、廃棄物処理などにより生じるスラグ類を道路の材料などにリサイクルする際に、安全性を確認するための試験法が規定されました(JIS K 0058-1)。 廃棄物の試験法では、試料を粒径5 mm以下に小さく破砕し、約10倍量の水(pH 5.8〜6.3)に混ぜてから、6時間の間振り続けて水と十分に接触させます。その後、フィルターで固形分をろ過して、水の中に溶け出た有害成分の濃度を測定し、 基準値と比較することにより廃棄物の埋立処分方法やその可否を判定します。土壌の試験法は、もう少し細かく(2 mm以下に)粗砕してから水に混ぜたり、フィルターの孔の大きさが小さいなど異なる点もありますが、ほぼ同じ手順になります。 一方、リサイクル目的のスラグ類の試験法は、利用をするときの形のまま(利用有姿)で行う試験と2 mm以下に粗砕して行う試験の2種類が定められています。 これらの溶出試験方法は、廃棄物やリサイクル製品の環境影響を把握することで、環境安全性や危険性の程度を予め確認する役割を担っています。ただし、単純な方法では、埋立処分やリサイクルの後にさらされる様々な環境を再現して、 その影響を適切に把握することは非常に難しいのも事実です。そこで、私たちは、想定される環境に応じて様々な溶出試験を組み合わせることで、環境安全性の評価と管理をより適切に行う方法ついて、検討を行っています。 |
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