循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 近況
2009年10月5日号

研究に必要な資金をどのように獲得するか?

山根正慎

 循環型社会・廃棄物研究センター(循環センター)では、本年度(平成21年度)、4つの中核プロジェクトのほか、40近い課題の各種研究を行っています。このような研究を進めるためには、研究者や研究施設のみならず、研究に専従する契約職員の追加的雇用、知見を高めるための学会参加や現地調査のための旅費、分析のための機器・薬剤、文献・統計資料の購入等を行うための資金が必要になります。このように研究には様々なお金が必要ですが、研究者はどのようにしてこのような資金を獲得しているのでしょうか?

 国立環境研究所の研究資金として一番大きなものは運営費交付金によるものです。これは2001年に省庁直轄の国立研究所から独立行政法人に組織形態が変わったことにより配分されるようになったもので、独立行政法人は自らの責任でこの交付金をそれぞれの業務(研究)や人件費などに効率的に使用することが求められています。国立環境研究所では、平成20年度に約92億円の運営費交付金を交付され、そのうち人件費は約28億円です。

 下のグラフは、循環センターにおける平成20年度の研究資金の内訳です。循環センター全体で約7億円の研究資金により各種研究を進めていますが、ご覧のとおり運営費交付金はそのうち約6割と大きな割合を占めています。

循環センターにおける研究資金

 しかし、運営費交付金は国の独立行政法人改革によって、毎年減額されることが決定しています。現在、国立環境研究所も含め、多くの研究機関が外部からの研究資金の獲得を増やすよう求められています。

 こうした状況のもとで、他の研究者や研究機関と切磋琢磨することで研究力を高めるため、多くの研究者が競争的研究資金に応募しています。競争的研究資金とは、国(文部科学省や経済産業省、環境省などの各府省)や公共団体、各種法人等が自らの取組を支援する知見を得るため必要な研究課題を公募し、研究者がその課題を満たす具体的な研究内容を提案することで、研究資金を得る仕組みです。その名のとおり、研究者の提案内容を第三者である有識者が比較・検討し、採択の是非や資金額を競争で決定するため、著名な研究者が提案をしても、落選してしまうことも珍しくありません。この制度には、国立環境研究所のような独立行政法人のみならず、国公立・私立の各大学や企業等の研究機関も応募できるため、研究者は数多の競争相手に勝つために、必死で提案内容を練り上げることになります。より良い提案内容にするため、国立環境研究所内の他分野の研究者や、大学・企業等の外部の研究者と連携し、それぞれが得意とする分野を分担する共同研究による提案が多くなされています。

 循環センターでも、先のグラフで示すように、競争的研究資金による研究資金は全体の約3割程度を占め、年々増加する傾向にあります。

 また、これら以外にも「競争的研究資金以外の外部資金」というものがあります。これは主に国や地方公共団体、企業などからの特定のテーマや技術について研究を委託されたり、共同で研究を行うことを指しています。循環センターでは高度処理型浄化槽の開発や廃棄物の処理方法などについての共同研究を企業等と進めています。

 このように、研究者が研究に必要な資金を獲得するために、外部からの研究資金を獲得することが、近年、非常に重要になりつつあります。このことは、研究者に求められる役割も変化しつつあることを示しています。つまり、従来の自分の専門分野について実験や調査を重ねて理論を打ち立てるような研究活動に加え、より広い分野の研究内容を企画立案し、経費を積み上げ、共同研究者との調整や、提案内容を分かりやすく説明するといった総合的なマネジメントを行う役割も研究者に求められつつあると言えるでしょう。

<参考資料>
  1. 総合科学技術会議:競争的研究資金制度について
    http://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/index.html
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