資源循環・廃棄物研究センター
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プラスチックの処理・リサイクル技術
加圧二段ガス化(EUP方式) [技術の概要]
  
技術概要
マテリアルフローにおける位置付け、受入実績
受入可能な廃プラスチック
受入能力
前処理の必要性
受入条件等

 

技術概要
  • ガス化技術の原理は以下に示すとおりである。

    @
    PVC系プラスチックを含み、混合状態で収集されたあらゆる廃プラスチックをペレット状に減容成形する。
    A
    次にこのペレット状のものを加圧内部循環流動床ガス化炉(5〜16kg/cm2、600〜800℃)にフィードする。
    一方流動床下部からガス化流動剤として酸素及びスチームを供給して部分酸化反応を行う。
    低温ガス化炉で生成されるガス成分は水素、一酸化炭素等である。
    B
    低温ガス化炉で生成されたガスは直結している高温ガス化炉(5〜16kg/cm2、1,300〜1,500℃に送られ、同時に供給される酸素及びスチームによって、更に部分酸化反応を進め、水素と一酸化炭素主体のガスを精製する。
    C
    高温ガス化炉生成ガス中には溶融スラグの他、廃プラスチックに含まれているポリ塩化ビニル等の塩素含有物による塩化水素など塩素化合物が含まれているので、瞬時に水冷却してスラグ分を固化分離すると共に生成ガス中の塩素化合物の除去を行う。
    水冷却でガス温度が200℃前後までに冷却されるのでダイオキシン類の生成や再合成が抑制される。
    D
    水冷却された生成ガスは、さらにガス冷却塔において水洗、脱塩化水素を行う。
    その結果得られるガスは水素、一酸化炭素等を中心とした組成のガスとなる。
    このガスは従来の重質油あるいは石炭など化石原料からガス化することで得られる合成ガスと同等の組成である。
    得られた合成ガスは、アンモニア原料(宇部興産)、メタノール原料(ダイセル)として利用される。また、燃料として利用する場合もある。
  • なお、ガス化技術の特徴は以下のように整理できる。

    @
    事前の選別や前処理をすることなく、塩素含有廃プラスチックをガス化原料に使用できる。
    A
    廃プラスチックの中の金属及び土砂類等の不燃物は低温ガス化炉、及び高温ガス化炉の下部から未酸化状の金属またはスラグとして回収される。
    また塩素分は循環水中から塩化アンモニウム(塩安:肥料)として回収することができる。(なお、塩として回収し、ソーダ電解原料としているケースもある)


  • EUPでは、生成したガス(一酸化炭素、水素)は(サーモセレクト法のような)熱源としてではなく、アンモニア等化学製品の基礎原料として利用(燃料電池、複合発電用燃料としても利用可能)。
    (宇部興産・荏原製作所プレスリリース)
  • 鉄、非鉄については、低温ガス化炉下から抜き出し、スクラップとして利用。
    無機物については、高温ガス化炉下から水砕スラグとして回収しセメント等に利用。
    塩素については、塩化アンモニウム(肥料)として利用。(なお、塩として回収し、ソーダ電解原料としているケースもある)
  • 通常のガス化溶融が常圧で処理しているのに対し、EUPのプロセスでは加圧処理している点が大きな特徴。
  • 高温ガス化炉内では加圧・還元雰囲気下(1,300℃以上)の化学反応となるため、原理的にダイオキシン類を生成しない。
    また、高温ガス化炉から出る合成ガスを瞬時に200℃まで冷却するため、ダイオキシン類の再合成が抑制される(亀田(宇部興産)「廃プラスチックのガス化」、プラスチック化学研究会討論会講演発表要旨集、平成12年)。
図 廃プラスチックガス化施設(EUP)のフロー図
図 廃プラスチックガス化施設(EUP)のフロー図
出典:(社)プラスチック処理促進協会「プラスチックリサイクル便覧」(2000) 一部加筆

 

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マテリアルフローにおける位置付け、受入実績
  • 加圧二段ガス化(EUP方式)及びガス化溶融(ガス化改質方式)技術については、容器包装リサイクル法における再商品化手法として、平成16年度には、プラスチック製容器包装再商品化量の17%に相当する5.2万tの再商品化を行っている。
  • なお、産業廃棄物の廃プラスチックの実績については、コークス炉化学原料化、高炉原料化、ガス化、油化と合わせて2万t(2004年)との報告がある((社)プラスチック処理促進協会)。
表 プラスチック製容器包装の再商品化実績
表 プラスチック製容器包装の再商品化実績
出典:(財)日本容器包装リサイクル協会

 

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受入可能な廃プラスチック
  • 塩ビ系や熱硬化性樹脂も含めた一括処理が可能で、紙や木くず等の有機廃棄物の混在も問題なく、金属やがれき等の不燃物も原料供給系を閉塞させないサイズであれば低温ガス化炉の底部より抜き出し可能である等原料への制約は少ない。
    (亀田(宇部興産)「廃プラスチックのガス化」、プラスチック化学研究会討論会講演発表要旨集、平成12年)
  • EUPによると、現在受け入れているのはプラスチック製容器包装のみであるが、プラスチック供給量を安定させるため、受入プラスチックの多様化を図っているところ。
  • 中でも自動車リサイクル法の制定を契機に自動車シュレッダーダストを新たなターゲットにしていきたい意向。
    自工会からの委託業務で実証試験を実施したところ、大きな問題はなかったとのこと。
  • 家電プラについては、臭素系難燃剤が含まれている場合が多いため、系外への臭素化合物の放出について、技術的な実証を進めた(特に排水処理が課題)。プラ処理協で実施した家電プラの臭素回収事業のメンバーとして参画した。

 

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受入能力
  • 既存のガス化プラント(川崎製鉄(現JFE)のサーモセレクト方式は除く)の設置状況は下表に示すとおり。
  • EUPでは、当初30t/日であった能力を平成15年度に100t/日まで増強している。
    また、大規模発生源である関東、関西にもリサイクル拠点を設置したい意向。
表 ガス化プラントの設置状況
企業 事業所 所在地
処理能力
イーユーピー
(荏原製作所・宇部興産)
宇部興産宇部工場 山口県宇部市
100t/日
(30,000t/年)
昭和電工 川崎事業所 神奈川県川崎市
195t/日
出所:草川紀久(高分子環境情報研究所)「わが国のリサイクル関連制度と技術の最新動向」、工業材料(2000)、HP等

 

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前処理の必要性
  • プラスチックについては、かさ比重の変動抑制とガス化炉への安定供給を目的として簡易圧縮成形(RDF状に成形)したものをガス化炉投入原料とする。
  • ピットに投入された廃プラスチックは、破砕機にて破砕された後、磁選機により廃プラスチック中に混入する鉄分が除去され、定量供給機を経て定量的に成形機に供給される。
    成形機では、廃プラスチックを加熱圧縮し、RDF状に成形。
  • その他のプラスチック(シュレッダーダスト、家電など)についても同様に成形することが必要。
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受入条件等
  • 熱硬化性樹脂、PET、PVCを含め広く受入可能。
  • プロセス後流の塩素処理設備のキャパシティを超える高濃度塩ビ系プラスチックの受入は困難。
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