循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のまめ知識
2010年11月22日号

「負の遺産」ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理

渡部真文

 ポリ塩化ナフタレン廃棄物(2010年11月22日号「ポリ塩化ナフタレンを含む廃棄物の熱的処理」参照)やアスベスト廃棄物(2007年9月3日号「廃棄されたアスベスト製品やその無害化処理物中のアスベストを分析する」参照)など、いわゆる「負の遺産」の「清算」が必要なものとして、ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物があります。PCBは絶縁油等に使用されましたが、カネミ油症などPCBが関連する中毒事件の発生、あるいは環境中での残留性や生物蓄積性が問題となり、現在では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)の第一種特定化学物質やストックホルム条約(POPs条約)で残留性有機汚染物質(POPs)などに指定されています。世界に先駆けて化学物質規制の枠組みを示した我が国の法律「化審法」(2007年6月18日号「化学物質を管理するということ−欧州の新たな化学物質管理法−」、2009年9月7日号「化審法の改正」参照)は、このPCBによる環境汚染問題を契機に制定されました。

 国内では、PCB特措法及び同施行令により、平成28年(2016年)までにPCB廃棄物の処理を終えることが求められています。また、POPs条約では、締約国会議が検討することを条件として、2025年までに使用の廃絶、遅くとも2028年までにPCB廃棄物の環境上適正な管理を行うことを目的とした確固たる努力を払うことが求められています。

環環ナビゲーター:たけ このような背景から、国内では、PCB廃棄物のうち、PCBそのものやPCBを使用した廃油・廃電気機器などは、現在、5箇所の施設を中心に処理が進められています。

 一方、PCBを使用していないにも係わらず、数〜数十mg/kg程度のPCBに汚染された絶縁油を含むPCB廃棄物(「微量PCB汚染廃電気機器等」)がみつかりました。その量は膨大であることから、別途これらの処理方策が検討されました。

 この検討を受け、「微量PCB汚染廃電気機器等」を処理するために、廃棄物処理法関係の省令/告示が改正され、「絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル」、「微量PCB汚染廃電気機器等収集・運搬ガイドライン」、「微量PCB汚染廃電気機器等の処理に関するガイドライン」などが作成・公表されました。また、2010年6月には微量PCB汚染廃電気機器等無害化処理に係る初めて環境大臣の認定が行われ(今後、認定取得者(施設)数は増える見込みです)、適正に処理できる体制が整ったことから、微量PCB染廃電気機器等についても順次処理が進められると期待されます。

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