循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のけんきゅう!
2007年7月2日号

どんなリサイクルがよいかな?

藤井 実

 今回は、リサイクルをする意義について考えてみましょう。家庭から日常的に排出されるごみの中には、燃えるものと燃えないものがあります。燃えるものには、紙やプラスチック、生ごみなどがあり、燃えないものには、缶や瓶などがあります。 燃えないものは、リサイクルして再び製品として利用しない限り、埋立てるしかありません。日本では埋立処分場の残りの容量が少なくなっていることもあり、廃棄物を埋立てることは極力避ける必要がありますので、リサイクルすることはその面で意義があります。 一方、燃えるものは、燃やせば容量を20分の1程度に小さくすることができるため、燃やすことによってやはり埋立量を減らすことができます。では、燃えるものを費用と手間を掛けてわざわざリサイクルする意義は何でしょうか。容器や包装にも使用されている、プラスチックを例に、意義を考えてみましょう。

Dr.グッチー

 リサイクルしてできた製品は、もともと天然資源から製造していた製品の代わりとして使用することができます。例えば、廃プラスチックを造粒して、製鉄所の高炉で鉄鉱石を還元して鉄を作るために用いる還元剤にリサイクルした場合、もともと鉄鉱石を還元するために用いていた製品、すなわち石炭から作られていたコークスや微粉炭の代わりになります。 ということは、プラスチックを還元剤にリサイクルすることによって、石炭の使用量を減らすことができるので、その分だけ「天然資源の消費削減」になりますし、石炭を使用していた際に排出されていた環境負荷、例えば温室効果ガスである「二酸化炭素の排出削減」にも繋がるのです。つまり、リサイクルをする意義は、埋立処分量を削減することだけではなく、天然資源の消費を減らすことと、環境負荷の発生量を減らすことにもあるのです。燃えないもののリサイクルにも、資源消費や環境負荷の削減効果があります。

 しかし、リサイクルがこれらの役割を果たすためには、"よい"リサイクルを行う必要があります。例えば、廃プラスチックのリサイクルを行うためには、分別収集したり、選別をしたり、破砕をしたりといった工程を経る必要があります。これらの工程には電気や燃料を使用するため、天然資源を消費し、環境負荷も発生します。そのため、リサイクルによって得られる効果が、リサイクルのために必要となる天然資源の消費や、環境負荷の発生量よりも大きくならないと、リサイクルを行う意義は薄らいでしまいます。 "よい"リサイクルとは、廃プラスチックが、なるべく多くの天然資源の代わりとしてはたらくリサイクルなのです。

 廃プラスチックのリサイクルの方法には、大きく分けて、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギー回収の3種類があります。マテリアルリサイクルは、プラスチックを小さく砕いたあと、溶かして成型します。ケミカルリサイクルは、プラスチックを小さく砕いてから固めて造粒物にしたあと、化学反応を伴うリサイクル、すなわち還元反応に使用したり、反応によってガス化して他の工業製品の原料としたりします。エネルギー回収は、造粒物を燃焼して、発電したり熱を利用したりします。

 図を見てください。廃プラスチックを、3つのリサイクル方法のうちのどれでリサイクルしても、廃プラスチックは最終的には燃えて(あるいは酸化して)二酸化炭素になってしまいます。マテリアルリサイクルで一旦製品になっても、いつかは使われなくなり、処分する必要があるからです。廃プラスチックの中に含まれている炭素は全て二酸化炭素になるので、廃プラスチック由来の二酸化炭素(CO2)は、どのリサイクル方法でも同じ量だけ発生します。これを回避するには、廃プラスチックを埋立てるしかありません。 しかし、埋立てれば二酸化炭素は出ませんが、天然資源の消費削減にもなりません。リサイクルによって二酸化炭素の排出量を削減し、なおかつ天然資源の消費を削減するために、なるべく多くの天然資源と置き換わるようなリサイクルを行って、「回避される二酸化炭素(CO2)」の量を多くする必要があるのです。マテリアルリサイクルであれば、歩留まり(製品になる割合)を高くし、石油から作ったプラスチック製品とそれほど遜色ない製品とすることができれば、沢山の石油を節約でき、それに伴って二酸化炭素の削減効果も大きくなります。 ここで、少し考慮しておくべきことがあります。例えば、天然ガスは石炭よりも二酸化炭素の排出量が小さい資源です。従って、天然ガスを節約するリサイクルが、石炭を節約するリサイクルに比べて、二酸化炭素の削減効果がある程度小さくなるのは、仕方のないことです。どんな天然資源が節約されて、その結果どんな環境負荷の削減効果が得られているのかを、きっちり見極める必要があるのです。

 リサイクルの効果をもっと詳しく知るには、"まめ知識"で紹介している、ライフサイクルアセスメントという方法があります。興味のある方はそちらも是非読んでみて下さい。

図 リサイクルによる天然資源の消費削減と二酸化炭素の排出削減
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. 藤井実ほか:リサイクルのLCI分析結果の表記法、土木学会論文集、63(2)、pp.128-137、2007
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