循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 社会のうごき
2010年4月5日号

25%目標と廃棄物管理

橋本征二

 鳩山首相が温室効果ガスの25%削減を明言したのは首相就任の直前、2009年9月のとあるシンポジウムにおいてでした。2020年までに1990年比で25%削減するというこの目標は、当時の麻生政権が打ち出していた2005年比で15%削減(1990年比では8%削減)という目標を大幅に上回っていたことから様々な反響を呼びました。15%削減が国内における排出削減の目標であるのに対して、25%削減は国内および海外における排出削減を合計した目標ではありますが、あと10年という期間を考えると、これが非常に大きな数値であることは明白です。

環環ナビゲーター:りえ

 しかしながら、気候変動防止のためには、世界レベルでの大幅な排出削減が求められることも事実です。2009年7月のラクイラ・サミット(イタリア)においては、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減、先進国全体では80%以上削減するとの長期目標が示されました。2050年に80%以上削減するという道筋の中で、今回の2020年目標も考えていく必要があります。

 さて、このような大幅削減を達成するためには、大幅な社会システムの変革が求められます。中でもエネルギーに関連する技術の転換はその中心を担うものです。太陽光発電、風力発電、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池等々、様々な技術が開発され導入が始まっていますが、こうした技術を大量に普及していくことが必要となります。

 ここで留意しておかなければならないのは、これらの技術には様々な希少金属が使われているということです。太陽光発電にも様々なタイプがありますが、例えばCIGS(Copper Indium Gallium diSelenide)という素材を用いるタイプの太陽光発電では、その名の通りインジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)といった希少金属が用いられます。また、風力発電や電気自動車といった技術には永久磁石が用いられますが、この磁石にはネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)といった金属が必要となります。さらに、ハイブリッド自動車や、電気自動車には電池が必要です。現在のハイブリッド自動車ではニッケル水素電池が多く用いられていますが、電気自動車とあわせリチウムイオン電池の使用が今後は増えていくことになるでしょう。これらの電池には、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)といった金属が用いられています。また、燃料電池にも様々な種類がありますが、例えば、PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)と呼ばれるタイプではニッケル(Ni)やプラチナ(Pt)が、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)と呼ばれるタイプではニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)といった金属が用いられています。

 気候変動防止のために、これらのエネルギー技術が大量に普及すれば、上記のような希少金属の供給も逼迫する可能性が指摘されています。特に、これらの希少金属は、少数の国や企業で生産されているものが多いことから、供給不足や供給不安定になるリスクが高い資源です。

 こうした状況に対応するには、いくつかの方法が考えられます。一つは、海外及び国内で独自の資源開発を行うことです。また、輸入した物質を備蓄しておくことも方法の一つです。日本では現在、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)などの7鉱種の備蓄を行っていますが、7鉱種で十分かどうかについては議論があるところです。さらに、製品を生産する段階で使用するこれらの物質の量を少なくすることが考えられます。例えば、PEFC燃料電池に使用されるプラチナ(Pt)の量を削減する技術開発が進められています。また、他の物質への代替も有力な対応方法です。プラチナ(Pt)を使用しない燃料電池の開発などがこれにあたります。最後に、リサイクルです。使用済みとなった製品からの希少金属の回収がこれから重要になると考えられます。

 近年、都市鉱山(2009年1月26日号「都市鉱山」参照)という言葉が注目を浴びるようになり、家庭から発生する小型家電を回収し(2010年1月12日号「使用済み製品の下取りと回収に関する取り組み」参照)、これらの使用済み小型家電から金属を回収する実験も始まっています(2009年6月8日号「都市鉱山と金属資源のリサイクル」参照)。今後は、これらの取組と合わせて、気候変動防止の進展によって普及する製品をどのように回収し、そこから希少金属をどのように回収するのか、廃棄物管理側でのシステムと技術の開発が必要となっています。

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