活動レポート
2014年12月号

シンガポール 訪日廃棄物技術視察プログラムを主催しました

久保田 利恵子

資源循環・廃棄物研究センターは、2013年から、めざましい経済発展を遂げているシンガポールと、廃棄物管理全般の分野で人材交流を強化しています。このような人材交流の日本にとっての最大のメリットは、日本の技術や制度をシンガポール、ひいては東南アジアの国々で採用してもらうための売り込みができることです。そのような中の人材交流プログラムの一環として、2014年10月7日~10月10日の間、シンガポールの廃棄物行政担当者、民間処理業者、研究者ら19名が来日しました。

本レポートでは、シンガポールが現在抱えている廃棄物処理やリサイクルの課題のうち代表的なものに触れながら、4日間にわたって、関東近辺の全9か所の視察を行った今回の視察プログラムの主な内容を紹介します。

シンガポールの小島で増え続けるごみ

シンガポールは面積にすると東京23区や淡路島と同じくらいですが、そこに2014年時点で人口は約547万人が住んでおり、世界有数の人口密度が高い国と言えます。シンガポールで発生するごみは2030年には1230万トンに達し、2013年と比較して57%増加すると推計されています。シンガポールでは家庭と事業者から収集したごみから、リサイクル可能なものを分別し、可燃物を焼却し、焼却灰や不燃物等はシンガポール本島からフェリーで20分ほどのセマカウ島に埋め立てています。しかし、今のペースで埋め立て続けると、2035年には寿命が来てしまいます。シンガポールにはセマカウ島以外に埋め立てられる場所がないことから、①ごみ発生量を減少すること、②リサイクル率を上げること、③ごみ処理業務の効率を向上することが課題となっています。

食品廃棄物をエネルギーに転換する

アジア諸国の食品廃棄物の大きな特徴として、水分が多いことが挙げられます。ごみの水分が多いと、焼却が非効率であるだけでなく、プラスチック、紙など本来リサイクル可能なごみも水分を含んでしまいリサイクルが難しくなってしまいます。近年シンガポールでは食品廃棄物が急激に増加しており、リサイクル率も10%程度と低い割合に留まっています。これを打開するため、2014年にシンガポール政府はレストラン、ホテルなど事業者から発生する食品廃棄物の発生量の届出を義務付けるなど食品廃棄物の減少に向けて取り組んでいます。

今回の視察では東京スーパーエコタウンに工場を持つ、バイオエナジー(株)を視察しました。同社は事業系、家庭系食品廃棄物、また事業系一般廃棄物として出される食品廃棄物(商業・レジャー施設から出る食品ごみや賞味期限切れになった食品廃棄物)を収集し、選別などの処理を経た後、メタン発酵技術を用いて、電力エネルギーと都市ガスの回収を行っています。バイオエナジー担当者からは、前処理の段階でどれだけビニールなどの混入物を取り除けるか、選別の精度が重要であるというお話がありました。現在同社で回収される電力は一日当たり20,000kwhですが、うち11,000kwhは東京電力に売電されているという情報に参加者は驚いていました。シンガポールでは食品廃棄物にビニールをいかに混入させないかが課題だ、屋台やレストランといった管理しやすい場所から導入できないか、といった意見が飛び交いました。

焼却灰を人工砂にリサイクルする

どのようにすれば廃棄物埋立量を減らせるでしょうか。焼却炉で燃やされたごみは灰になります。この灰は、現在は全てセマカウ島に運ばれ埋め立てられていますが、焼却主灰は適切な処理を経ることにより、路盤材に混合して再利用することができます。

シンガポールで適用できる可能性のある焼却灰のリサイクル技術の一例として、埼玉県寄居町彩の国資源循環工場敷地内にあるツネイシカムテックス埼玉株式会社を訪問し、焼却主灰を1000度以上で高温処理し、重金属、ダイオキシンなど環境に有害な物質を分離或いは分解し、人工砂を生産するプロセスを視察しました。自然資源を持たないシンガポールにとっては建設資材に使われる砂の確保も喫緊の課題です。もともと埋め立てられるしかなかった焼却灰がシンガポールで必要とする人工砂に生まれ変わるとあり、同技術にシンガポールの参加者らからも高い関心が集まりました。生産にかかるコストや建設資材としての強度、環境安全性など導入に際しての具体的な検討事項について質問が集中しました。さらに、土地利用を少しでも節約したい政府関係者からは、一連のリサイクルプロセスに必要なプラントの大きさは、設計次第でプラント建設に必要な面積を節約できるとの説明を受け、安心した様子でした。

建設廃棄物を工事現場で分別する

最後に建設現場から排出されるごみについてです。シンガポールでは老朽化したビルや高層住宅の建て替え、新規ビルの建設などが進んでおり、建設廃棄物発生量の抑制とリサイクルの徹底が問題となっています。コンクリートがらはほぼ100%リサイクルを既に達成していますが、これをなんとか建設・解体現場内でできないか(それによって高いリサイクル率を維持しつつ、コストや人員を削減できないか)、というのがシンガポール廃棄物業者らの期待です。今回、参加者は(株)大林組の都内の高層ビル建設現場を訪れ、同社のゼロエミッション活動を視察しました。多様な資材を用いるため、多種類かつ大量のごみが発生すること、各建設過程を請け負う複数の建設業者が重層的に業務に従事しており、現場での廃棄物分別のルールを徹底することが困難なことから、建設現場でのゼロエミッション達成は容易ではないことを想像していた参加者でしたが、現場での業者の枠を超えた現場業務従事者の一体感と、ごみを分別する時間、場所、機材などがシステム化された現場を目の当たりにして、システム次第でシンガポールでも導入が可能であることを確信していました。また、タケエイ川崎リサイクルセンターでは、建設現場で分別された建設廃棄物を一括で受入、更に選別して再資源化する過程を視察しました。参加者は、シンガポールの工業団地に同様の受け入れ施設を整備し、コンクリート以外の建設廃棄物のリサイクルを促進することを検討していました。シンガポールでは、アジアの周辺国からの出稼ぎ労働者が建設事業に従事しているため、言語・習慣・文化の違いが障害になるようでしたが、日本でも趣旨やルールの普及啓発から始めたことを紹介すると、将来の実現に自信を付けたようでした。

結びにかえて

シンガポールのごみ問題解決には、効率的な処理技術の選定も必要ですが、一般市民のごみ分別への理解と協力も必要です。

このため、まずは排出源での分別を徹底させることが重要ですが、実現に必要な施策として食品リサイクル法をはじめとした、リサイクルを義務付ける制度の導入が、事業者、一般市民のライフスタイルやごみへの取り組み方法を転換させるきっかけになることを日本の事例を通して理解していただけた視察プログラムになりました。仕組みと技術をうまく組み合わせて、アジアの国同士学びながら、循環型社会の実現を目指した交流を続けていきたいと参加者、主催者共々決意を新たにしたプログラムでした。

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