循環・廃棄物の豆知識
2024年1月号

【大掃除】

大塚 康治

皆さんは年末に大掃除をされたでしょうか。常日頃から丁寧に掃除をされ、年末に大掃除は不要の方も多いかもしれませんし、内容はご家庭や職場でばらばらのことと思います。

広辞苑では、掃除とは、「①ごみやほこりをはたいたりして取り除き、清潔にすること。②便所の糞尿をくみ取ること。」とされ、大掃除とは、「平常は手のとどかない家の隅々までも、大規模に掃除すること。」とされています。また、正月の神を迎えるために、屋内の煤ほこりを払い清めるすす払いや煤掃きは12月13日に行うところが多いとされていますが、実は大掃除を実施することは、法律で定められていることをご存じでしょうか。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法):昭和45年法律第137号

この法律は、家庭から出されるごみや、事業活動に伴って排出される産業廃棄物を適正に分別、運搬、再生・処分することで、生活環境の保全や公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律ですが、第5条では「土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。)は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない。」とし、同第3項では「建物の占有者は、建物内を全般にわたって清潔にするため、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。」と定めています。

大掃除の頻度や方法は各市町村の計画にゆだねられていますが、A町では、条例によって大掃除の方法をより具体的に定めていますので一例としてご紹介したいと思います。

現代のライフスタイルに必ずしもマッチしない事項もありますが、条例が制定された昭和40年代の生活環境や公衆衛生に対する考え方が表れていると思います。つくば市のように毎年6月と12月に市内一斉清掃の日を設定してポイ捨てごみを回収されている自治体もあるようですので、皆さんもお住いの市町村ではどのような取り組みとなっているのかこの機会に確かめてみて下さい。

(A町廃棄物の処理及び清掃に関する条例施行規則)

第10条 法5条に規定する土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。)は、次に掲げる事項について町長が定める計画に従い、常に清潔の保持及び大掃除を実施するように努めなければならない。

(1) 屋内

ア 畳、敷物を日光にさらすこと。
 イ 天井等のくもの巣を除くこと。
 ウ 物置、押し入れ、戸棚の隅々をよく手入れし、鼠の生息場所をなくすこと。
 エ 床下はごみを掃き出し、換気を十分にすること。
 オ 室内の採光及び換気を十分にすること。

(2) 屋外

ア 台所流し及び下水溝は、さらって排水をよくすること。
 イ 便所はくみ取り、その内外を清掃し、また修理等をすること。
 ウ 便所、ごみ箱付近の汚土をごみとともに焼くこと。
 エ 湿、涸の甚だしいところは、乾燥した土砂をまくこと。

昔、家庭から出されたごみは庭先や菜園に埋めたり、燃やしたりしていましたが、現在の廃掃法では、一部の例外を除いて廃棄物を焼却してはならないとされています。掃除や大掃除をされた後は、お住いの市町村の指定する方法にしたがって分別回収にご協力下さい。

労働安全衛生法:昭和47年法律第57号

この法律は、労働災害の防止や労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です。

この法律では第23条で「事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。」とするとともに、労働安全衛生規則第619条では、「事業者は、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。」とし、「1 日常行う清掃のほか、大掃除を、六月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うこと。」「2 ねずみ、昆虫等の発生場所、生息場所及び侵入経路並びにねずみ、昆虫等による被害の状況について、六月以内ごとに一回、定期に、統一的に調査を実施し、当該調査の結果に基づき、ねずみ、昆虫等の発生を防止するため必要な措置を講ずること。」としています。

この法律では、快適な職場環境を形成するために、年末に限らず6か月1回以上大掃除を実施することを定めており、廃掃法とは異なり、法律第119条において「6か月以下の懲役又は50円以下の罰金に処する」と罰則規定が設けられています。職場環境ですのでご家庭は対象となりませんが、事業主や事業場の責任者の皆さんは、職場で働く労働者の皆さんのために、定期的に大掃除が実施されるようお願いいたします。

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し活動が活発となるなか、インフルエンザ等のまん延も懸念されています。身近なところから生活衛生の保全や公衆衛生の向上を考えたいものです。

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