循環・廃棄物の豆知識
2019年5月号

有機汚濁とその指標

徐 開欽

河川、湖沼そして海といった水域には、炭水化物(セルロース、糖類など)や蛋白質、油脂類、有機酸(アミノ酸、核酸、酢酸、脂肪酸など)ならびにこれらの分解産物と中間体、および難分解性有機物といわれるフミン質など、多種多様な有機物が存在します。有機汚濁とは、有機物の量が増大することによる水域の水質汚濁現象のことです。この現象は水中の有機物そのものよりも、有機物を分解する際に水中の溶存酸素(Dissolved Oxygen:DO)が消費されることによって生物の生息環境や、悪臭、着色などの生活環境に影響をもたらします。水域の有機物量の代表的な指標には、BOD、COD、TOC等が使われています。ここでは、これらの代表的な指標について解説します。

1)BOD(生物学的酸素要求量、Biological Oxygen Demand)

BODは、水中の比較的分解されやすい有機物が、好気性微生物により酸化分解される時に消費される酸素の量(mg/L)で、通常20℃で5日間、暗所で静置した時の消費量を指します。つまり、微生物によって利用されやすい有機物量を示す指標とされています。河川の有機汚濁を測る代表的な指標であり、水質が悪い(有機物が多い)ほどBODが高くなります。本指標は、自然界における好気性微生物による酸素消費を実験的に再現するもので、BODが高い水系では、水中のDOが消費されやすい環境であると言うことができ、その水系は嫌気状態(酸素がほとんどない状態)に陥りやすいとも考えられます。なお、本指標では、有機物以外でバクテリアに消費される物質(亜硝酸など)もBOD値に反映されます。

2)COD(化学的酸素要求量、Chemical Oxygen Demand)

CODは、水中の有機物を酸化剤で化学的に酸化する際に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したもので、湖沼・海域などの閉鎖性水域や藻類の繁殖する水域の有機汚濁の指標に用いられます。この値が大きいほど、水中に有機物等が多く、汚濁負荷(汚濁の度合い)が大きいことを示しています。本指標は有機物量の指標として使用されていますが、有機物以外の被酸化性物質も酸素要求量に反映されます。酸化剤には、日本では、過マンガン酸カリウム(KMnO4)が用いられており、米国や中国など諸外国では重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)が用いられていますので、日本以外の国で分析されたCODには、その値が高くなることに注意が必要です。

3)TOC(全有機炭素、Total Organic Carbon)

TOCは、水中に存在する有機物の総量を、有機物中に含まれる炭素量で示したものです。本指標は、水中の有機物を分析装置内で高温燃焼方式(650°C~ 1,200°C)の燃焼炉に試料を注入し、試料中の有機物を「燃焼」させて二酸化炭素を生成させる方法、または湿式酸化方式(試料に酸化剤を添加し、試料中の有機物を化学的に酸化分解して二酸化炭素を生成させる方法)により分解させ、発生する二酸化炭素量を検出器で定量することにより得られます。BODやCODの値が、生物や酸化剤の能力に影響を受けるのに対して、TOCは、有機物量が直接表現されます。

日本では、水質汚濁に係わる環境基準などの法規制には、湖沼・海域等ではCOD、河川ではBODが用いられています。河川は流下時間が短く、その短い時間内に河川水中のDOを消費する生物によって酸化されやすい有機物を問題にすればよいのに対して、湖沼や海域は滞留時間が長く、有機物の全量を問題にする必要があること、また湖沼には光合成により有機物を生産し、DOの消費・生成を同時に行なう藻類が大量に繁殖していることから、BODの測定値が不明瞭になることなどによるとされています。なお、平成15年5月には、水道法の水質基準項目として過マンガン酸カリウム消費量(CODと類似の指標)に代えて、TOCが用いられることになりました。

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