循環・廃棄物の豆知識
2018年2月号

固液平衡の相図の読み方

由井 和子

今月の資源・廃棄物のけんきゅうで紹介されているように、油脂分から成分を分離したり、ある成分を別の液体に溶かす場合などでは、相図を使うと便利です。この解説では、二成分系の相図の読み方について簡単に説明したいと思います。

相図とは何か

学校の理科の時間では物質の三態(固体・液体・気体)というのを習いますが、0℃で氷が水に、100℃で水が水蒸気になるように、物質の状態は温度と圧力によって一つに定まっています。三態のどれが安定なのかを示したものを相図または状態図といいます。図書館で理科年表(丸善)や化学便覧 基礎編(丸善)を調べると、様々な物質の相図に関する情報が得られます。相図は純粋な物質のほか、混合物にもあります。

飽和脂肪酸とノルマルヘキサンの二成分系固液平衡の相図

図1 パルミチン酸とノルマルヘキサンの二成分系の相図

図1 パルミチン酸とノルマルヘキサンの二成分系の相図

右図に、混合物の相図の例として、飽和脂肪酸の主成分のひとつであるパルミチン酸とノルマルヘキサンの二成分系の固液平衡の相図を示しました。パルミチン酸はパーム油などの植物油に含まれる成分のひとつで、脂肪酸と呼ばれるものの一種です。脂肪酸の仲間にはお酢の成分である酢酸も含まれますが、酢酸よりもっと分子量が大きくて蒸発しにくいものを脂肪酸と呼びます。パルミチン酸は常温で固体です。一方、ノルマルヘキサンはA重油に含まれる成分の一種で、常温では液体です。図の縦軸は温度、横軸はパルミチン酸とノルマルヘキサンの比率を示しています。(重量基準なので重量分率といいます)図は大気圧のときのものですが、通常の操作を考える上ではこれで事足ります。それでは図の読み方を見ていきましょう。

図に黒い実線が2本ありますが、上から液相線、固相線といいます。図の両端はパルミチン酸100%またはノルマルヘキサン100%の相の状態を表していて、液相線との交点から、それぞれの融点が63℃と18℃と読み取れます。液相線より上では、パルミチン酸とノルマルヘキサンの混合物は放っておくと均一な液体になり、固相線より下の温度では全体が固体になることを表しています。液相線と固相線の間に挟まれた部分は一つの相としては存在できない状態で、この状態に置かれると、混合物はやがて液体と固体に分離します。

例として、パルミチン酸とノルマルヘキサンが重量基準で50%ずつ混ざったものについて考えてみましょう。パルミチン酸の重量分率が50%のところを上にたどっていくと、18℃で固相線と交差し、53.6℃で液相線に交差しているので、混合物を低温から加熱すると、18℃で溶けはじめ、53.6℃で全て液体になることが分かります。18~53.6℃の間は液体と固体に分離しますが、分離した液体と固体についての情報も図から読み取れます。仮に温度が40℃だとすれば、40℃における液相線、固相線との交点を探します。液相線との交点はパルミチン酸の重量分率が12%のところ、固相線は分かりにくいですが、パルミチン酸100%のところです。これが、40℃における液体と固体の組成で、純粋なパルミチン酸の固体がパルミチン酸が12%溶けたノルマルヘキサンの液の中に沈んでいるという状態になることが分かります。

ここまで分かれば、液体と固体の量も計算することができます。まず、はじめに試料が100gあったとして、40℃における固体の量をX(エックス)gとおくと、液体は(100 - X)gとなります。固体は純粋なパルミチンなので、固体に含まれるパルミチン酸の量はXgとなりますが、液体に含まれるパルミチン酸は(100 - X)×0.12gなので、液体と固体を合わせたパルミチン酸の総量はX+(100 - X)×0.12g となります。一方、はじめに100gの試料があり、パルミチン酸の重量分率が50%でしたので、パルミチン酸の総量は100×0.50=50g とも書けます。温度を変えてもパルミチン酸がなくなるわけではないので、X+(100 - X)×0.12=50 と等式が成り立つはずで、これを解きますとX = 43となって、40℃では純粋なパルミチン酸の固体43gとパルミチン酸を12%含むノルマルヘキサン溶液57gが得られることが分かりました。

図

ここで取り上げた方法は成分が三つ、四つと増えても使える方法ですが、二成分の場合は、もっと簡単に液体と固体の量を計算することができます。40℃の例では、固体はもともとパルミチン酸が50%だったものが100%になったのだから、(100-50)%分増えています。一方、液体は50%から12%になったので(12-50)=-38より、38%分減っています。これを互いに埋め合わせるためには、固体:液体の比率が38:50(あるいは1/50:1/38と考えてもよい)になればいいということになります。全部合わせて100gだったのなら、固体が43g、液体が57gとなり、先ほど計算で出した値と一致しました。ところで、この50-12や、100-50は、図1の40℃の線上における、組成である50%の位置から液相線と40℃の線との交点への距離に対応しています。従って、組成の位置を基準にして、液相線への距離に逆比例するように重さを決めるといいわけです。これはちょうど、右に50、左に38の長さの竿を持つ天秤または「てこ」に相当していて、天秤の右と左の力が釣り合うためには、右と左の重さを1/50:1/38=38:50にすれば良いのに似ています。そのため、この方法には「てこの法則」という名前がついています。

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