循環・廃棄物の豆知識
2016年9月号

廃棄物処理技術のリバース・イノベーション

石垣 智基

先進国発信の商品やサービスの革新的向上や高機能化等の開発を収益につなげる従来のイノベーションに対して、新興国において、それぞれの国の市場に適した商品やサービスをはじめから開発し提供することをリバース・イノベーションと呼びます。もともとは先進国企業の開発拠点を新興国に置き、商品・サービスの市場優位性を確保した上で、それを自国に持ち帰って収益を上げることを指していましたが、近年では新興国の地元企業による、自国のための市場確保で完結するビジネスモデルが大半を占めています。需要者の購買力に見合った価格で必要十分な品質や機能のみを備えていること、電力事情が不安定な地域でも安定稼働できること、持ち運びに適していること、高度な専門知識が乏しくても修理や改良ができる簡素な設計であること、などが特色として挙げられます。

廃棄物処理の分野でも、リバース・イノベーションに基づく技術は、すでに先進国発信の技術の強力な競合相手として台頭してきています。処理効率や収益性を高めるために集積型の処理を指向せざるを得ない先進国型の技術と異なり、小規模・分散型で必要最低限の処理機能と環境性能に特化することで、市場競争力を高めているのがリバース・イノベーション型技術の特徴です。建設コストはもちろんですが、維持管理のための追加的なエネルギー、薬品、燃料が削減できること、および維持管理に過度に高度な専門知識を要しないことなど、いくつかの点で新興国の市場にあった優位性が示されています。また、廃棄物処理は公共サービス事業ですので、単純なマーケットだけでなく社会的な受容性が大変重要です。新興国においても、廃棄物処理施設は市街地から遠く離れた郊外に設置されることが多く、その際も住民同意を得るのが大変困難となっています。廃棄物処理過程で回収される再生資源・エネルギー・燃料を民間企業や電力会社に売却して収益を得るモデルでは、イラスト納税者であり立地負担者である市民にとって間接的な恩恵しか得られず、しかもその大部分は市街地・都市部の住民と均等に再配分されています。リバース・イノベーション型の技術は、小規模分散型でコミュニティ指向のアウトプットを通じて、立地地域の住民を第一の受益者とすることで地域住民の満足度を向上させることが可能です。たとえば小規模熱処理で生産される電力を電力会社のグリッドに接続せず蓄電池等を活用して世帯の電力消費のピークカットにつなげることや、嫌気性消化で生じるガスをボンベ充填し世帯の熱源として配布することなどが挙げられます。このように受益者を特定可能という点で、廃棄物処理由来のエネルギー・資源利用の新たな形式としても、リバース・イノベーション技術には期待が寄せられています。

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