循環・廃棄物の豆知識
2015年5月号

災害廃棄物の処理

竹崎 聡

災害廃棄物の種類と特徴

平成23年3月に発生した東日本大震災では、地震・大規模な津波により膨大な災害廃棄物が発生しました。その量は、全体で約3,100万トンにもおよび、全国の家庭などから排出されるごみ・し尿(一般廃棄物)の1年間分(4,500万トン)の約7割に相当し、極めて大量の廃棄物が一度に発生したことが分かります。その災害廃棄物は大きく二種類に分類されます。津波により運ばれてきた水底や海岸の砂泥等からなる泥状の「津波堆積物」(全体の約35%)、それ以外の「混合廃棄物」(全体の約65%)です。

イラスト津波堆積物は土砂等が主成分であり、安全性や強度が基準を満足することが確認できれば、建設工事の資材として再利用することが比較的容易にできます。一方、混合廃棄物は、倒壊した家屋、生活用品(家電製品、家具、衣類など)、さらにはコンクリートや草木類などが混ざり合った状態にあり、そのままでは再利用や処分が困難な状況にありました。また、その全てを埋立地(廃棄物最終処分場)に処分したくても、その残存容量を3割超過すると推定されたため、混合廃棄物の処理においては埋立処分量を出来るだけ少なくすることが必須とされました。

混合廃棄物の処理フロー

混合廃棄物の埋立処分量を削減するためには、出来るだけ再利用すること、もしくは容量を減少させることが必要となります。そこで、図-1に示すように、混合廃棄物を可燃物、不燃物、金属、コンクリートなどに分別し、焼却処理や再生利用を促す手法が取られました。さらに、東日本大震災では津波による被害が大きく、混合廃棄物に津波堆積物が含まれている特徴がありました。津波堆積物は本来、廃棄物でなく、それ単体においては再生利用が容易なものです。そこで、今回は廃棄物に付着している津波堆積物を、振動ふるい、比重差選別や土壌改質など、多段階の処理を経て分離することによって、建設資材等への再利用を図りました。これらの処理を含めた各種技術を使用した結果、混合廃棄物においても再生利用率を8割強2)とすることができ、1,600万トンにおよぶ埋立処分量の大きな削減につながりました。

今回の災害廃棄物の処分や有効利用に関する詳しい情報は下記においても学ぶことができます。

図-1混合廃棄物処理フローの例(環境省HPより引用) 図-1混合廃棄物処理フローの例(環境省HPより引用1)
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