循環・廃棄物の豆知識
2013年3月号

ハウスダストとアレルギー

佐野 和美

アレルゲンとしてのハウスダスト

どれだけきれいにしていても、ハウスダストは溜まります。床を這い這いする赤ちゃん、全身を毛繕いするペットなど、床面に近いところにいる生物への影響が心配されます。ハウスダストによる人体への影響で、一番よく知られているのは、アレルギー性疾患を引き起こす『抗原(アレルゲン)』になることです。花粉症も、このアレルギーの一種です。くしゃみが出たり鼻水が出たりといった不快な症状が起きます。アレルギーは、時にはぜんそくなどの深刻な症状を引き起こすこともあります。

イラスト:しげる

ハウスダストとひとことに言っても、その中には、動物のフケ、ダニ、カビ、、衣類の繊維など様々な物質が含まれています。その多くはダニの死骸など動物性の物質ですが、実は、プラスチック製品からも微量な物質が削り取られ、ハウスダストの構成成分となっています(2013年3月号「ハウスダストの組成とPBDEsの粒径分布:代表的な試料を得るために」参照 )。これらの構成成分のうちどの物質がアレルゲンとなっているのかは、厳密にはわかりません。ディーゼル排気微粒子(DEP)や、プラスチック製品に含まれるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)など、アレルギー疾患を悪化させる化学物質も知られており、研究がすすめられています(環境儀NO.27 アレルギー性疾患への環境化学物質の影響)。ハウスダストに含まれている物質を科学的に分析することで、どの物質がアレルゲンとなっているのか、少しずつ明らかになっていくでしょう。

アレルギーは免疫系の過剰反応

では、アレルギーはどうして起こるのでしょうか。私たちの体には、外部から侵入してくる敵(抗原)に抵抗するための防御機能が備わっています。これを『免疫』といいます。ウイルスや菌などから体を守る重要なシステムである免疫が暴走してしまうのが、アレルギーです。外部からやってきた敵(花粉やハウスダスト)に対して、体は、抗体という物質で対抗します。抗原は、それぞれ種類ごとに特徴が異なっているため、侵入してきた抗原の型に合った抗体が、リンパ球の一種であるB細胞によって新たに産生されます。

ハウスダストをゼロにすべきか

このように、ハウスダストがアレルギーの引き金になることは既に明らかになっています。しかし一方で、衛生仮説という考え方もあります。これは、過度に衛生的すぎる環境がアレルギー疾患を増加させているという考え方です。酪農家、ペットを飼育、兄弟が多いなどの家庭で育った子供は、大きくなってからアレルギー疾患にかかりにくいという疫学報告がいくつかあります。

体の中で、B細胞に抗体を作るように命令するのが、ヘルパーT細胞です。ヘルパーT 細胞にはTh1とTh2がある注)のですが、実は、この2種類の細胞のバランスが非常に重要なのです。Th1細胞優位になりすぎると炎症性疾患になりやすく、Th2細胞優位になるとアレルギー疾患になりやすいといわれています。この大事なTh1/Th2のバランスは、小児の内(3歳くらいまで)に決定すると言われています。生後間もない乳児は、Th2細胞の方が優位な状態です。Th1細胞は、感染症など外部からの刺激によって増加します。ここで過度に衛生的すぎる環境が続くと、Th2細胞が多いまま大きくなってしまい、アレルギー疾患にかかりやすいというのです。

かといって、既にアレルギー症状のある家庭でハウスダストやダニの死骸、カビなどを放置しておけば、さらに症状を悪化させてしまいます。

近代的な密閉度の高い住居に居住する場合、日本家屋より多少頻繁に掃除をすることを心がける。この程度がよさそうです。

(注:最近ではTh17という細胞の存在も知られていて、自己免疫疾患に関与していると考えられています)

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