循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のまめ知識
2008年10月20日号

汚染土壌のセメント原料化

河井紘輔

 セメント製造施設では原料・燃料の代わりとして様々な他産業からの廃棄物や副産物等が利用されています。原料の代わりとしては高炉スラグ、石炭灰、汚泥、汚染土壌などが利用され、天然資源の消費を節約して埋立処分量の削減に役立っています。また、燃料である石炭の代わりとしては廃プラスチック、木くず、廃タイヤなどが利用され、温室効果ガス排出量の削減にも貢献しています。これらを合計すると年間約3,000万tもの量になり、この量はセメント1,000kgを製造する際に廃棄物・副産物等が約400kg使われていることを意味します。ここでは特に、廃棄物・副産物等の中で今、処理に困っている汚染土壌のセメント原料化について紹介します。

 ところで、セメントの原料として使える廃棄物・副産物等とはいったいどんな条件を満たせば良いのでしょうか。もともとセメントの原料としては、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄、石膏が使われ、主要成分はCaO、Al2O3、SiO2、Fe2O3です。これらの成分を含んだ物質であれば原料として使うことが可能です。汚染土壌は、粘土の代わりとして原料になります。

 そもそも、汚染土壌とは油で汚染されたものや、カドミウムや鉛などの重金属類で汚染された土壌のことを言います。セメント製造施設ではロータリーキルンという、ゆっくりと回転する筒状の窯(長さ60〜200m、1分間に2〜4回回転)に、他の原料と一緒に汚染土壌を投入し、約1,450度もの高温で焼きます。汚染土壌は高温で処理されることによって無害化されます。

 セメント製造施設における汚染土壌の使用量は土壌汚染対策法が施行された平成15年頃から増加し、平成19年度には264万tに達しました。法の施行を契機に、土地取引の際に汚染が確認された場合に汚染土壌を掘削除去・搬出する事例が増え、それらの多くを受け入れているのがセメント製造施設なのです。

 このように、セメント製造施設は安定的かつ大量に廃棄物・副産物等を使うことにより、天然資源の保全、地球温暖化の防止、環境リスクの低減、埋立処分場の延命に役立っています。

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