循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - 循環・廃棄物のまめ知識
2007年1月22日号

熱分解ガス化

呉 畏

 燃やすことのできる都市ごみからは、熱エネルギーや可燃性ガスの回収が可能なため、「廃棄物資源」とも呼ばれます。エネルギーを回収する方法としては、主に「焼却・熱回収」と「熱分解ガス化」技術があります。 「焼却・熱回収」技術は、都市ごみを焼却炉内で完全に燃やして、その熱をボイラーや熱交換器により回収し、電力や温水などをつくる方法です。現在、日本の約80%の都市ごみは、こういった方法で処理されています。 一方、「熱分解ガス化」技術は、ごみを部分的に燃やして発生する熱を用いて、都市ごみから可燃性ガスを生成し、それをガスエンジンやガスタービンなどの燃料に利用することにより、焼却よりも高効率の発電が実現できる技術です。 さらに、ガス化工程の後に「溶融」と発電を行うものが「ガス化溶融」技術です。ごみの燃焼では、ダイオキシン類などの有害物質を含む灰が発生することが問題ですが、灰を1300〜1500℃の高温で溶かし(溶融し)、それが冷えた「スラグ」と呼ばれる物質にすることで、 そうした問題を回避することができます。「溶融スラグ」は、外見が石炭に似た堅い石状の物質で、路盤材の原料などとしてリサイクルが可能となります。

 近年、「熱分解ガス化」技術を利用して、都市ごみから水素(H2)や液体燃料などを製造する技術の開発が特に注目されています。熱分解ガス化により都市ごみから一酸化炭素、水素などの可燃性ガスを生成した後に、その副産物の炭化水素成分を酸素、 水蒸気と反応させ、さらに分離処理することにより、高純度な水素を得るのです。水素は、燃料電池自動車や燃料電池発電設備のエネルギーとして利用されますが、高効率な動力や電力を得た上に、排ガスには水しか含まれてないため、クリーンなエネルギー源として期待されています。 「熱分解ガス化」による液体燃料製造技術は、ガス化の後に触媒という化学物質を用いて、可燃性ガスからメタノール、ひいては軽油などの液体燃料を合成する技術です。

 このように、「熱分解ガス化」技術は、ごみから様々なエネルギーを取り出すことができ、地球温暖化防止や廃棄物の有効利用促進に役に立つ有望な技術なのです。

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