近況
2014年12月号

研究所全体を管理する業務の体験

稲葉 陸太

国立環境研究所の管理部門

世の中の数多くの研究機関と呼ばれる組織は、それぞれ専門とする研究分野を持っています。国立環境研究所(以下、国環研)の場合は、ズバリ「環境問題」です。ただ、一口に環境問題といっても実に幅広く、国環研が全てをカバー出来るわけではありません。そのため、どのような環境問題を対象に、どのように研究すべきか、常に問われているといえます。また、個々の研究者や部署がバラバラに研究するのではなく、限られた予算内で研究所全体としてバランスよく、将来を見据えて研究することが求められます。

そこで、国環研全体としての今後の方針を考え、管理・運営を任されているのが「企画・管理・情報部門(以下、『管理部門』)」です。これに対して、研究を実施するのが「研究実施部門(以下、『研究部門』)」です。また、研究部門と管理部門の他に理事長や理事などの「役員」がいます。

管理部門の業務を兼務するとは?

管理部門には、通常の事務的業務の他にも、各研究部門への研究予算の配分、研究成果のとりまとめと外部への報告、研究所全体としての中長期的な研究計画の作成、外部からの評価への対応などの業務があり、研究者の専門知識が必要な場面が増えています。その意味で、研究者自身が管理部門の一員としてこのような研究管理の業務を担うことは、研究を効率的に進めていくうえで大変重要になってきています。

一方、研究部門にいる研究者は、管理部門の役割や研究所全体の状況を必ずしも理解しているとは限りません。管理部門の仕事を理解して協力することで、研究所全体の運営が円滑に進みやすくなることも多いと思われます。また、将来研究者が管理職になった際に、組織を管理・運営した経験や知識はきっと生きてくるでしょう。

このようなことから、国環研では、研究部門に所属する研究者に管理部門の業務を一定期間担ってもらうしくみがあります。

研究企画主幹のしごと

研究者が担うのは、管理部門の「企画部」における「研究企画主幹」という研究活動の推進のための実務を行う役職です。現在(平成26年12月)、研究企画主幹は3人体制で、任期は半年、業務を費やす割合は100%(つまり業務時間の全て)となっています。現在、3人の研究企画主幹が、各々「福島支部準備室」、「中期計画」、「研究評価」に大別される業務を担当しています。以降、この3人を主幹1、2、3と呼ぶことにします。

福島支部準備室とは、国環研が福島県に設置する福島支部に向けた準備をする部署です。福島支部では、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故を受けて、災害に伴う環境問題に関する研究を目的としています。主幹1は、福島支部準備室の運営に関する業務を担当しています。

国環研などの独立行政法人は、法人ごとに3~5年単位で達成すべき業務運営の中期計画を策定しています。国環研の研究業務もこの中期計画に沿って進めなければならず、非常に重要なものです。中期計画は、研究部門の長や管理部門の長、役員を交えた会議で議論・決定されます。主幹2は、この中期計画策定のための資料作成や連絡調整などの業務を担当しています。

研究評価は、大きく分けて所内と所外の2種類があります。所内の研究評価は、国環研が用意した予算の枠に対して所内の研究員が応募し、その研究計画を所内の委員が評価するものです。所外の研究評価は、国環研全体の研究活動に対して、所外の委員が評価するものです。主幹3は、これら所内外の研究評価に関して、研究活動のとりまとめや資料作成や連絡調整などの業務を担当しています。

私が担当したのは主幹3で、前述の研究評価の他、発明などの知的財産、海外の著名な研究者から助言を得る委員会、および大学との連携講座に関する業務も担当しました(平成26年9月に兼務を終えたところです)。今回の管理部門の業務経験を通じて、個人的には「マネジメント業務の理解と訓練」および「他分野の研究の理解」という成果がある程度得られたのではないかと思います。また、効率的な仕事の方法を考える機会にもなりました。ただ、時間に余裕が無く、管理部門の仕事や組織の改造に取り組めなかったのは心残りです。私は今後、管理部門の業務の経験を、研究やマネジメントにおける自分自身の能力向上と視野拡大につなげるとともに、国環研全体の発展にも貢献していきたいと考えています。

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