循環・廃棄物のけんきゅう
2017年5月号

高齢者のごみ出しをめぐる課題と支援の取り組み

小島 英子

高齢者にとって「ごみ出し」は大きな負担になることも

みなさんは、ごみ出しが大変だなと思ったことはありませんか?新聞やダンボールなどはまとめて出そうとすると重たくて、さらに集積所が遠いと運ぶのは重労働です。また、決められた曜日や時間までにごみを集積所に出さなくてはいけないところをうっかり忘れてしまったり、慌てて持っていったら収集車が回収したあとで仕方なくごみを持ち帰ったりという経験もあるのではないでしょうか。

最近では80代、90代でも元気に活躍される高齢者が増えていますが、一般に高齢になると筋力の低下や腰痛、骨粗しょう症による骨折などにより、若い頃と同じように歩くことは難しくなります。また、腕や体幹の筋肉の衰えや、関節リウマチを患うと、重たいものを持つことも大変です。さらに認知症やその前段階の軽度認知障害になると、曜日や分別ルールを覚えることが難しくなります。毎日のごみ出しは、若いひとでも負担に感じる作業ですから、こうした症状が出てくる高齢者にとっては、大変な作業です。

ごみ出しに苦労する高齢者はなぜ増えているのか

近年、ごみ出しが困難でありながら、必要な支援が受けられない高齢者が増えています。こうした状況は、高齢化以外の社会の変化によっても引き起こされています。まず一つは、核家族化です。日本の全世帯のうち、1/4が65歳以上の高齢者のみの世帯で[1]、その割合は年々増加しています。かつての日本では、三世代同居が当たり前で、高齢者の生活を一緒に住む子供や孫が支えていましたが、現在では高齢者のみで生活し、家族に頼らずに日常生活を送る高齢者が増えているのです。もう一つは、地域の繋がりの希薄化です。昔は、足腰の悪い高齢者がひとりで住んでいれば、近所の住民がごみ出しや買い物を手伝ったものですが、こうした近所の助け合いも都市部を中心としてみられなくなっています。

必要な支援が受けられないと・・・

高齢者が、ごみ出しに困難を抱えているのに必要な支援が受けられないと、図に示すように3つの困った状況に陥ることが心配されます。一つめは、高齢者が無理にごみ出しを続ける状況で、毎日大変な思いをするとともに、転んで怪我をする危険性もあります。二つめは、ごみ出しができなくなってしまう状況で、ごみが溜まった不衛生な部屋で生活を送ったり、さらに深刻化するとごみ屋敷になったりするおそれもあります。三つめは、曜日や分別ルールを守らずに不適切なごみ出しを続けてしまう状態で、集積所のごみの散乱に繋がります。また、介護ヘルパーや週末に世話をしにくる家族が、近所に迷惑を掛けることを気にしつつも、やむを得ず収集日でない日に、ごみを出してしまう場合もあります。以上の状況は、ごみの収集・運搬に支障をきたしたり、近隣住民とのトラブルにつながることも懸念されます。

図:高齢者のごみ出しをめぐる課題 高齢者のごみ出しをめぐる課題

高齢者のごみ出し支援の取り組み

ごみ出しが困難な高齢者に対する支援は、全国で始まっています。私たちが全国の廃棄物担当課を対象に行ったアンケート調査によると、23%の自治体で高齢者のごみ出し支援を行っています[2]。その多くは、自治体の収集員が高齢者宅の玄関先からごみを回収するもので、「ふれあい収集」と呼ばれています。また、ごみを回収する時に、高齢者に「こんにちは。回収に来ました!」とひと声かけ、高齢者の体調が悪い様子に気づいたときには、家族に連絡をしたり、救急車を呼んだりといった対応をとっている取り組みも多くあります。

写真 新潟市亀田西小学校区コミュニティ協議会の取り組み 新潟市亀田西小学校区コミュニティ協議会の取り組み

ごみ出し支援の担い手は、自治体職員に限りません。新潟市亀田西小学校区コミュニティ協議会では、市の支援制度[3]を利用して、中学生が高齢者のごみ出しを支援しています。積雪のある冬季限定で、自主的に手を挙げてくれた生徒が、登校の途中に高齢者の玄関先から集積所までごみを運ぶ取り組みです。高齢者にとっては、自分の孫のような年齢の生徒たちがごみ出しを手伝ってくれることが嬉しく、生活のハリにもなっているようです。また、生徒にとっては、ボランティア活動を実践することで、責任感や地域への関心が生まれることが期待されます。さらに、中学生と地域の人たちとのコミュニケーションも生まれ、みんなが住みやすい地域づくりにもつながっています。

このように、高齢者のごみ出し支援は、廃棄物管理の課題を解決するだけでなく、高齢者の見守りや生活の質の改善などの高齢者福祉の向上、さらには安全・安心な地域づくりにもつながる取り組みです。今後、様々な担い手によって、ごみ出し支援の活動が広がっていくことが期待されます。私たちは、ごみ出し支援の考え方とノウハウをまとめた「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」を作成しました[4]。これから高齢者のごみ出し支援に取り組みたい自治体や地域団体を主な読者として想定して、支援制度の設計や運用の仕方をわかりやすく説明するものです。関心のある方は、是非ご覧下さい。

図
<引用文献>
  1. [1] 厚生労働省:平成 27 年国民生活基礎調査 (2016)
  2. [2] 小島英子・多島良・秋山貴・横尾英史:高齢者を対象としたごみ出し支援の取組みに関するアンケート調査結果報告,国立研究開発法人 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター (2015)
  3. [3] 新潟市ごみ出し支援事業
  4. [4] 国立環境研究所:高齢者ごみ出し支援ガイドブック(2017)
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. [1] 小島英子:高齢者のごみ出しを巡る課題と支援方策,都市清掃,69(329),pp.8-13 (2016)
  2. [2] 相川侑子:新潟市におけるごみ出し支援事業について (特集 廃棄物分野における高齢化社会対策),都市清掃,69(329),pp.31-34 (2016)
  3. [3] 小島英子・多島良:自治体による高齢者のごみ出し支援の取り組み―支援タイプ別の事例と特徴―,廃棄物資源循環学会誌,28(3),印刷中 (2017)
  4. [4] 小島英子・多島良・朱文率・佐藤昌宏・松神秀徳・神保有亮:共助と公助による高齢者のごみ出し支援制度-利用意向に影響する心理的要因-,廃棄物資源循環学会論文誌,26,pp.117-127 (2015)
<関連する調査・研究>
  • 【第4期中長期計画】 資源循環研究プログラム
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