循環・廃棄物のけんきゅう
2017年3月号

中国都市部のごみ分別、行動を持続させる糸口は何か

吉田 綾

上海市の生ごみ分別促進のための取り組み

中国では経済発展と市民の生活水準向上に伴い大量のごみが発生しています。政府は焼却施設の増設や市民による分別を促進するなどの対策を行っていますが、増えるごみ量に対応が追いついていないのが現状です。上海市では毎日約2万トンのごみが発生していますが、焼却率は4割で残りの6割はそのまま埋立処分されています(中国統計年鑑2016)。中国では2000年に上海市を含めた全国8都市でごみ分別の取り組みが開始されましたが、今までどれも失敗に終わっているそうです。なぜ中国ではごみ分別が継続されにくいのでしょうか。その理由を探るため、今年(2017年)2月に上海市で社区 (地域コミュニティ)のごみ分別を支援しているNGOを訪問しました。

写真1 回収された湿ごみ(生ごみ) 写真1 回収された湿ごみ(生ごみ)

上海市では、2014年5月からごみを湿ごみ(生ごみ)、乾ごみ(その他ごみ)、有害ごみ、リサイクル可能ごみの4種類に分別するルールを導入し、それぞれのごみのマークと回収容器の色が規定されています。社区(地域コミュニティ)では物業会社(不動産管理会社)の清掃員、業主委員会(住宅管理組合)と住民ボランティアの3者がごみの分別に関わっています。中国の人は朝の出勤時と夜の夕食後の1日2回ごみを捨てる習慣があり、それに合わせてごみ捨ての多い時間(朝晩の6-8時頃)にボランティアの人が交代でごみ回収場所の立ち番をします。住宅管理組合の人はごみがキチンと分別排出されているかを見回り、分別が出来ていない住民に分別ルールを説明します。不動産管理会社の清掃員はごみ捨て場や分別施設を清掃したり、分別されていないごみがあれば再分別したり、リサイクル可能なごみを別の業者に売りに行ったりします。住民は通常「湿ごみ」と「乾ごみ」2つのビニール袋を下げてごみ捨て場にやってきます。生ごみは袋から出して生ごみ専用の茶色のごみカートに入れ、袋は「乾ごみ」のカートに捨てます。ごみ捨て場の近くには水道の蛇口が整備されており、最後にそこで手を洗うという手順になっています。

上海市はグリーンアカウント(緑色帳戸)というごみ分別促進制度を導入し、生ごみ分別の普及に努めています。住民が指定された時間に生ごみを分別排出するとボランティアが1回10ポイント(1日最大20ポイント)を付ける作業を行います。ポイントはある程度溜めるとタオルや洗剤などの日用品や商品券と交換することができます。生ごみ分別にインセンティブを付けることで、生ごみ分別に参加する市民を増やし、続ける意欲を持たせようというのが狙いです。

上海市宝昌路のある住宅管理組合の人から話を聞きましたが、2012年から分別を始めて4年経って大分住民自ら分別できるようになったそうです。グリーンアカウントも物がもらえてお得と評判は良いようでしたが、引っ越しによる住民の入れ替わりやお手伝いさんの交代などが頻繁にあるため、今でもボランティアと管理組合が監視・指導をしないと適切に分別してもらえないそうです。ごみ回収場所を見てみると、「乾ごみ」の量が多く、生ごみの表示があるところにも「乾ごみ」用のごみカートが置かれたりしていました。カートの色はごみの種類毎に市が色を決めています* が、カートの数が足りないため、指定されたた色以外のカートも使われています。そのため、どの箱に何を入れたらいいのかが一目で分かるようにはなっておらず、説明がないと簡単に間違えてしまいそうな状況になっています。リサイクル可能なごみの排出場所も1箇所しかないので、そこからさらに誰かが種類毎に分ける作業が必要になり、清掃員の負担が大きい印象でした。

* 上海市の規定では、リサイクル可能物は青色、有害廃棄物は赤色、湿ごみ(生ごみ)は茶色、乾ごみ(その他ごみ)は黒色の分別容器で回収することになっています。
写真2と3 どちらも乾ごみの分別カート(黒色のカートがないため緑色とオレンジ色を使用) 写真2と3 どちらも乾ごみの分別カート(黒色のカートがないため緑色とオレンジ色を使用)
写真4 リサイクル可能物の回収の様子 写真4 リサイクル可能物の回収の様子

機械やインターネットによる分別回収

中国ではこれまでビン、缶、PETボトルなどの資源ごみは廃品回収業者に売却すればある程度の利益になるため、行政が分別収集しなくても、市民が市場原理で自主的に分別する仕組みになっていました。しかし、今では資源ごみの買取単価が下がり、たいした利益にならないため、回収業者に売ろうとする市民の意欲は減少し、回収業者の数も急激に減少したそうです。しかしその一方で、分別排出を促進する新たなサービスも始まっています。北京でPETボトルの自動回収機を製造している企業では、地下鉄やショッピングセンターなどに回収機を設置し、消費者がPETボトルを投入するとポイントを付与しています。付与されたポイントはWeChatというアプリを通じて公共交通カードのポイントや商品券等に交換したり、同社の社会貢献プロジェクトに寄付したりすることができます。この会社ではPETボトル以外にも、衣類や携帯電話、古紙の自動回収機も開発し設置を進めています。また、WeChatのサイトを通じた不用品の訪問回収サービスも始めました。これにより回収業者に売りに行くのが面倒な消費者が家にいながら資源ごみの回収を依頼できるそうです。 携帯電話やIT技術を利用したさまざまなサービスが普及する中で、このような新たな回収形態が増えることは大変興味深いことですが、スマホ操作が苦手な人などには利用しにくく、全ての人々がこのようなサービスを利用するには、まだ工夫が足りないように感じました。

いくつかの調査で中国の一般市民の分別意識や意欲はそれほど低くないのに、実際の行動に結びついていないことが指摘されています。行動の阻害要因はいくつかありますが、分別ルールが分からない市民への教育・啓発や分別しない人への罰則の強化が必要だという意見があります。しかし、そもそも市民の協力しようと思えるような分別方法になっているか、分別しなければごみ処理にかかる費用はどの程度増えるのか、政府によるごみ処理方法・過程はどの程度住民に信頼されているかなどの疑問に対して実証的に答えていくことが必要でしょう。今回訪問したNGOの担当者は、「住民自らごみを分別しなければならない」「ごみを分別するのは良いことだ」と思う心理的・雰囲気作りも重要だと言っていました。ごみ分別を自分事と捉えて面倒だと思わないまでに習慣化させるにはどのような働きかけが有効か、中国の文化・生活習慣にあった仕掛けを具体的に明らかにするような研究が期待されます。

<もっと専門的に知りたい方へ>
  1. JICA都市廃棄物循環利用推進プロジェクト : 政策大綱 第五部分別政策
    http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/1000019368_07.pdf
  2. 中国CCTV  Beijing trials bottle-recycling vending machines
    http://english.cntv.cn/2014/09/21/VIDE1411276563132182.shtml
<関連する調査・研究>
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