循環・廃棄物のけんきゅう
2015年11月号

ベトナム・ハノイ市の家庭では資源ごみの分別をしているか?

横尾 英史

途上国では行政による分別収集が普及していないがジャンクバイヤーがいる

途上国の家庭では資源ごみの分別をしているでしょうか?このような疑問に答えるために、ベトナム・ハノイ市の中心部を対象として行った調査の結果を紹介します。

さて、ここで注意したいのは、日本や欧米の先進国と異なり、途上国ではまだまだ行政による分別収集が行われていないということです。今回の研究対象地であるハノイ市の中心部における収集でも、ごみの分別は要求されていません(例外として、一部の対象地域で行われている生ごみの分別収集があります)。つまり、家庭で発生するごみを全てまとめて排出して(ルール上は)構わないのです(写真1)。この現状を聞くと、排出源である家庭で分別をする人は少ないような気がしますね。他方で、これまでの研究から、途上国ではジャンクバイヤー(写真2)と呼ばれる人たちが資源ごみを集めてまわっていることが知られています。詳しくは以前の記事をご覧ください(2011年2月号記事「ベトナムにおける有価物回収の実態」)。ジャンクバイヤーたちのビジネスが成立しているということは、資源ごみを誰かが供給しているということなので、分別している家庭があるのだろうという予想ができますね。このように、一見すると反対の二つの予想が成り立つので、調査を実施して、どのくらいの家庭で分別されているかを定量的に明らかにすることにしました。

写真1 家庭ごみを都市環境公社の回収カートに排出する女性(ハノイにて) 写真1 家庭ごみを都市環境公社の回収カートに排出する女性(ハノイにて)
写真2 ジャンクバイヤー(ハノイにて) 写真2 ジャンクバイヤー(ハノイにて)

ハノイの77%の家庭で使用済みペットボトルが分別されている

調査は2013年の8月から10月の間に行われました。755の家庭をインタビュー調査しました。これらは、特段の基準を設けずに、無作為に抽出した地域の家庭です。この調査の計画や準備の様子も、以前の記事をご覧ください(2015年2月号記事「インタビュー調査でデータをあつめる」)。この調査では、段ボール、新聞、雑誌、ノート、印刷用紙、金属、ガラスびん、ペットボトル、その他のプラスチックボトルの9種類について、使用後にどのように処分しているかを調査しました。

調査の結果をまとめたものが表になります。例えば、段ボールを購入・使用している家庭のうち実に84.3%の家庭で分別をしているとの回答となりました。なお、分別した資源ごみは、ジャンクバイヤーらに売る家庭と、無料で渡す家庭の両方がありました。私は分別している家庭としていない家庭は半々程度ではないかと考えていたのですが、意外にも高い割合となりました。他の資源ごみも見てみましょう。新聞、雑誌、ノート、印刷用紙といった古紙類はいずれも80%を超える家庭で分別がされていました。これと比べて、やや低いのがペットボトルの77.3%で、金属がそれに続きます。低いと言っても、4家庭のうち3家庭で分別されているという結果です。その他のプラスチックボトルも同程度の家庭で分別していましたが、ガラスびんを分別しているのは半数程度でした。

表 資源ごみの種類ごとの分別をしている家庭の割合(%)

分別する家庭としない家庭の二極化

次に、各家庭が何種類を分別しているかを見てみましょう。ここでは、以下の指標yを作成して分析しました。

y=分別している種類の数/(購入・使用している種類の数)

この数値は0以上1以下の値をとります。例えば、9種類のうち、8種類を購入・使用している家庭では分母が8になります。そのうち、半分の4種類を分別していれば、分子が4となり、値は0.5をとります。この値は分別している種類の割合を示すものです。

9種類全てを購入・使用していないと回答した家庭が9家庭ありました。実際にこの9家庭で全く資源ごみが発生していない可能性はありますが、これらの家庭が調査の意味を理解していなかった可能性もあります。このような回答は家庭調査で多かれ少なかれ生じますので、その割合を示すことが大切になります。この調査の場合は755家庭のうちの9家庭だったので小さい割合といえます。残りの746家庭の指標yを計算しました。その結果、この指標yは二極化しました。

yの分布をグラフにしてみたのが図です。これを見ると、右端に多くの家庭がいることがわかります。これらの家庭では、購入・使用している種類のうちほとんどを分別しているので「熱心に分別する家庭」と呼べるでしょう。y が0.75より大きい家庭は545家庭でした。大半の家庭でほとんどの資源ごみを分別している様子がわかります。一方で、左端にも山があります。これらの家庭はyが0.2よりも小さいので、ほとんどを分別せずに混ぜて捨てていることがわかります。これらの家庭は「分別しない家庭」と呼べるでしょう。そして、この二つの山の間、例えば、ちょうど半分の種類を分別して、残り半分は混ぜて捨てるy=0.5 の家庭はほとんどいないことがわかります。つまり、ハノイ市の家庭は分別を熱心にする家庭とほとんどしない家庭に二分されることがわかったのです。

図 yの分布(横軸がy、縦軸は家庭数の多さを表す確率密度)

まとめと今後の課題

以上の調査より、ハノイ市中心部の家庭の約8割が資源ごみの分別を行っていることがわかりました。また、分別は多くの種類の資源ごみに対して行われていることもわかりました。そして、分別している家庭ではほとんどの種類の資源ごみを分別しているのに対して、しない家庭ではほとんどされていないという二極化の傾向にあることがわかりました。

これらの結果から、今後のハノイ市における分別制度について少しだけ考えてみましょう。市による分別の要求がない現状でも多くの家庭が分別していることを考えると、将来的に分別収集を導入したとしてもそれが廃棄物処分量を減らす効果はあまり大きくないかもしれません。また、今後さらに分別を促進していく際には、現時点で全く分別していない家庭にいかに分別してもらえるかがカギとなりそうです。そのような家庭に分別してもらうために、まずはどのような家庭が分別をしないのか?分別をする家庭としない家庭を分ける要因は何か?その背後にはどのようなメカニズムがあるか?を明らかにする必要があります。今後のさらなるデータ分析で、これらの問いに対して定量的に答えていきたいです。

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