けんきゅうの現場から
2011年8月号

津波堆積物などに由来する飛散粉じんの測定調査支援

鈴木 剛

東北地方太平洋沖地震の被災地には、被災県内外から多くの支援スタッフ・物資が派遣・送付され、行政・民間一体となった復旧・復興活動が現在も行われています。私たち、資源循環・廃棄物研究センターのメンバーもまた、こうした活動を支援するための取り組みを進めています。その一環として、廃棄物資源循環学会と共に調査隊を被災地に派遣し、震災による廃棄物の発生状況や処理の実態把握を行っています(以下、先遣調査と略します)。表題の測定調査支援は、先遣調査を通じて抽出した現場のニーズに対応する活動のひとつと言えます。

測定調査支援の経緯

震災発生から数週間後、宮城県石巻市や気仙沼市では、津波被災地域の避難所や震災廃棄物を処理する現場での呼吸器疾患の増加が医療スタッフより多数報告されました。その原因のひとつとして、津波堆積物(津波がもたらした土砂や泥)などを由来とする飛散粉じんが疑われています。3月下旬には、宮城県から飛散粉じん調査協力の打診があり、これを受けて、本研究所の環境健康研究センターは飛散粉じん測定装置の搬入を行いました。しかし、4月中旬の先遣調査の時点では、現地で活動可能なスタッフが不足していたため、装置を動かすことが出来ていませんでした。その際に今後の測定調査支援を要請されたことがいきさつとなります。

支援要請への対応

これを受けて本研究所では、環境健康研究センター、環境リスクセンター、環境計測研究センター、資源循環・廃棄物研究センターから成る調査チームを4月22日に発足させました。宮城県の関係諸機関の協力の下、今日までサンプリング調査を継続的に行っています。緊急的には屋内外で飛散している粉じんの粒径や量について、中長期的には津波堆積物や震災廃棄物の処理・処分に伴って発生する飛散粉じん中化学物質の存在実態について、測定調査を行い、曝露対策や環境・健康への影響評価を実施するための情報を宮城県に提供することを目的としています。

現地サンプリング調査の実際

調査地点は、沿岸部の工業団地が壊滅的な被害を受けた石巻市、重油火災が発生した気仙沼市、震災廃棄物の野焼きが確認された南三陸町から、比較的規模の大きい避難所を中心に選定しました。サンプリング調査は、2~4名の職員を5月上旬から隔週で現地へ派遣しており、宮城県保健環境センターなどの関係諸機関と協力して、屋内外の空気や室内粉じん・ホコリを採取しています。屋外空気は、避難所屋上などに装置を設置して、24時間かけて採取しています(写真1)。屋内では、小型ポンプを使用し8時間かけて室内空気中の粒径別の粉じん量の測定(写真2)や、室内に静置しているホコリの採取を実施しています。

写真1 屋外空気の採取装置写真1 屋外空気の採取装置
写真2 屋内空気中の粒径別粉じん量測定の様子写真2 屋内空気中の粒径別粉じん量測定の様子

今後の対策・対応のために

今回の対応は、要請を受けてからのスタートでしたので、サンプリング調査の態勢が整うまでに時間がかかってしまったという反省点があります。平時から災害に備え、より迅速に対応できる態勢を整え、強化することの重要性を痛感しました。私たちは、支援調査の結果を、屋内外で実施される飛散粉じんへの対策に役立てると共に、今後の災害に対応可能な調査態勢をよりスムーズに確立できるようにするための知見として活用していきたいと考えています。

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